岩屋毅外相の〝媚中派〟ぶりが極まった。昨年12月末の訪中で王毅外相と会談し、中国人向けにこれまで最長5年間だったのを10年有効とするビザ新設を表明した。また団体旅行向けビザは15日から30日に延長される。中国だけが得する緩和措置だが、背後関係を探ると「医療ツーリズム利権」が浮かび上がるのだ。
外交部会でも議論されず決定
中国人向けのビザ緩和問題に対して疑問を持つ人は多いだろう。昨年末からSNS上で「岩屋毅外務大臣の更迭を求めます」とのハッシュタグが拡散された。
当の岩屋外相は意に介していない様子だ。12月27日の記者会見でこう述べた。
「今回の査証緩和措置は、先刻申し上げましたように、一定層に限った優遇措置ではありません。我が国の査証については、治安上の影響などの観点から、中国に限らず、一定の経済要件を設けておるところでございますので、そこは御理解をいただきたいと思います」
ビザ発給要件の緩和について自民党保守派の議員から続々、批判が殺到した。昨年12月25日、早々に反応したのが小林鷹之元経済安保相。Xに「ここまでビザを緩和する?」と投稿した。また萩生田光一元政調会長は1月10日、インターネット番組「言論テレビ」で「ビザ拡大は党の外交部会等に全くかけず約束した。乱暴だ」と批判した。
岩屋外相が中国人向けのビザ緩和に踏み切ったことについて医療ツーリズム推進を目論む医療業界との関係が指摘されている。現在のインバウンド政策、また岩屋外相の支援者を検証すると確かに医療業界の思惑が影響した可能性は高いだろう。
岩屋外相の地元が大分3区(別府市、中津市など)という点からして医療ツーリズムとの関係は「密」とみてもいい。別府市は日本有数の温泉地であることはご存知の通り。自治体や医療業界は温泉と医療を組み合わせた「新湯治・ウェルネスツーリズム事業」を推進してきた。大分県観光・地域局が発行する「大分県ツーリズム戦略」でも医療ツーリズムを経済振興策として挙げられている。
県内各地にある温泉の良さを再確認し、全国に向けて改めて売り出すとともに、温泉巡りツアーや美容・健康に良い泉質、入浴方法などの情報提供、医療機関と連携したヘルスツーリズム、地獄蒸し料理などの食、温泉水を使った化粧水等の関連商品など温泉の効能を活かした様々な利活用を支援します。
加えて岩屋外相と医療業界の関係も無視できない。政治団体「毅と医療を考える会」の政治資金収支報告書(令和4年分)をみると別府市内の医療関係者からの献金がズラリと並んでいる。
大分県医師会・河野幸治会長もそんな支援者の一人だ。岩屋外相との関係について問うた。
「(岩屋外相が)県議会時代から応援しており法令にのっとり適正に献金しています。医療ツーリズムについては政治的なことは分かりません」(河野氏)
医師会も医療ツーリズムを推進する立場だが、政策部分についての明言は避けた。
医師会といえば自民党の有力支援団体だ。岩屋外相に限らず自民党議員とは交流がある。ただ中国ビザ問題を併せて考えれば単なる「支援団体」と片付けることもできない。自民党親中派議員‐インバウンド‐医療ツーリズムという3点で検証してみると岩屋外相の思惑がみえてくる。
国交省案件は二階氏が「観光分野」をとった
外国人患者の受け入れについては2011年から始まった。2010年、当時の民主党政権が成長戦略として提唱した「ライフ・イノベーション」の中に外国人患者の受け入れが組み込まれた。そして「医療滞在ビザ」が創設され医療ツーリズムの原点になった。筆者も民主党政権には批判的な立場をとるが、民主党に責任転嫁はできない。後述するが根拠法ともいえる「観光立国推進基本法」は自民党政権下で制定されたもの。それにインバウンド政策は自民党政権下で推進されてきたことだ。
インバウンド政策の柱の一つが医療と観光をセットにした医療ツーリズム。これで訪日客を呼び込む狙いだ。
しかし医療業界の当初の狙いは「輸出」。医療団体関係者によれば医療滞在ビザ制度が始まった当時の医療団体はむしろ医療のアウトバウンドを狙っていたという。要するに検査や医療サービスなどの海外展開である。ところが保険制度や関係法令などのハードルがあり医療のアウトバウンドは困難だった。そこでインバウンドで医療目的の訪日客を呼び込み利益につなげようというわけだ。
さてここでキーパーソンになるのがおそらく多くの読者がお察しの通り自民党元幹事長・二階俊博氏。インバウンド、観光政策における重要人物である。「国交省案件のうち建設など社会資本整備を公明党に渡して、二階氏が観光部門をとった」(元自民党議員)というのが定説。長らく国交相ポストを公明党議員が占めているのはこのためだ。その結果、地方の業界団体が国交相に陳情に行く際、自民党は自身の支援者を公明党議員に紹介しなければならない。自民党議員にとって国交相への陳情は同時に支援者名簿を渡すも同然となった。
インバウンド政策は実は自民党の首を絞めかねないのである。
二階氏と中国の関係については当サイトもたびたび取り上げてきたがまさに朋友、蜜月関係だ。2010年、北海道・伊達市で二階氏と親交がある中国人実業家が「トーヤレイクヒルゴルフ倶楽部」を含む森林約900haを購入したと報じられた。中国人実業家は長期滞在可能な医療ツーリズム施設の建設を計画したが結局、計画は頓挫したという経緯がある。
インバウンド政策の根拠法ともいえる「観光立国推進基本法」は旧運輸省官僚で第一次安倍政権で国土交通政務官を務めた藤野公孝元参院議員が中心となって2006年に制定。もちろん中国陣営からも高く評価されている。2015年4月22日の『人民日報』では「日本の「観光立国」を推進した二人の和歌山県人」として二階氏と藤野氏を取り上げている。記事を読むと両氏はまるで中国の意を受けて立法したかのようだ。
藤野 私は国土交通省(旧運輸省)に満30年奉職しました。中国に対する団体観光ビザ開放に取り組んだ当初は不法就労や盗難事件等が新聞紙面を賑わしていたこともあり大小様々の反対に遭遇しました。しかしどんな時も当時の二階俊博運輸大臣がずっと私を激励してくださり、「藤野君、これは君の使命だよ! 君の天命だ! 」とまでおっしゃってくださいました。二階大臣に助けられて、私はどうにか使命を果たすことが出来ました。
藤野氏は参院議員を辞した後は、観光団体の役員や医療機器やインバウンド事業を手がける会社の顧問に就いた。
「意味がない」身元保証機関(登録旅行会社)
二階氏と藤野氏肝入りの「医療滞在ビザ」は期間が90日以内、6ヶ月、1年で通常の観光ビザよりも長い設定。発給する際はあらかじめ登録された旅行会社などが身元保証機関となり患者の身元保証を行うことになっている。診療を希望する外国人患者の言語問題、また医療機関で支払いトラブルを防ぐというのが身元保証機関の役割だ。
「身元保証機関(登録旅行会社)のリスト」は外務省のWEBサイトで閲覧可能だ。例えば和歌山県をみると二階氏の地元、御坊市の「株式会社中紀バス」が身元保証機関になっている。非常に分かりやすいとは思わないだろうか。
リストには日本企業も散見されるものの、大半は中国系企業。それも見るからに「ペーパーカンパニー風」だ。中にはすでに連絡がとれない企業、またはWEBサイトが閉鎖された企業も確認できた。
これについてはやむを得ない事情もあり「コロナ禍で身元保証機関から撤退した企業もあった」と観光業界職員は指摘する。
しかしコロナ禍とは無関係で身元保証機関制度については行政関係者、業界団体からも疑問視する声は少なくない。先の観光業界職員はこう話す。
「身元保証機関になること自体は特に金銭的な負担はありませんが、メリットがないんですよ。外部からは利用実績も見えません。建前上は富裕層の外国人(実際は中国人)を受け入れるということですが、本当に富裕層ならば別ルートで日本の医療機関で診察してもらっていると思いますよ。あまり意味がない制度と思えてなりません」
確かに日本で診察を受けたいという中国人は少なくないという。
「中国にも良い病院、有能な医者はいますが高度な医療の場合、基本的に共産党幹部が優先されるのです。それならば仮に自費だったとしても日本の病院で診察を受けたいという富裕層は一定量います」(中国通)
そうはいっても現在の身元保証機関が機能しているとは思えない。
確かに身元保証機関リストは外務省HPに掲載されているとはいえ〝投げやり感〟が漂う体裁だ。
実際に身元保証機関はどう運用されているのか。観光庁観光資源課によると身元保証機関の新規登録や各種相談窓口は「一般社団法人Medical Excellence JAPAN」(渋谷健司理事長)という。
渋谷氏といえばコロナウイルスが蔓延した当時、メディアで感染症対策を解説した常連有識者。また医療ツーリズムの推進者でもある。
そもそも外国人が日本の医療機関を希望する場合、中長期的な滞在が必要だとして業界側から「医療滞在ビザ」が求められた。しかし中国人については岩屋外相が10年間ビザの導入を決めており、医療滞在ビザの「90日以内、6ヶ月、1年」の期間をゆうに超える。
医療滞在ビザと10年ビザとどう使い分けをするのか一般社団法人Medical Excellence JAPANに問うたところ「まだ医療滞在ビザと10年ビザの問題は共有化されていません」という説明だ。中長期的な滞在が可能になる医療滞在ビザと岩屋外相が決めた10年ビザとの兼ね合いが分からない。医療滞在ビザ、観光ビザであろうが現状の制度は「自費」であるため、どちらの制度でも診察を受けるのは可能。
また外務省領事局外国人課によれば「10年ビザが発行するという形で動いていますが、詳細については全く決まっておりません」とした。
Medical Excellence JAPANも外務省外国人課も10年ビザについては〝当惑〟といった様子が伺えた。
当初、業界団体からの要請から中国人のビザ取得要件が緩和されたと予想していた。しかし仮に業界団体が緩和を望んだ場合、制度変更を想定してより医療滞在がしやすいような仕組みが検討されていたはずだ。その方が医療ツーリズムがより拡大したことだろう。ところが関係機関の反応をみると10年ビザは「降ってわいた話」の印象だ。
もしや10年ビザは岩屋外相の見切り発車、独断専行ではなかったかと勘繰りたくなる。現に党の外交部会にはかることもなく決定したのも妙だ。党内親中派のトップ、二階氏が引退した後、中国とのパイプ作りのため10年ビザは〝お土産〟という可能性は大いにありえる。
日本からみれば媚中議員でも中国にすれば恩人。二階俊博、河野洋平、福田康夫ら親中派の顔を継ぐのは岩屋毅外相になりそうだ。
スーツ、既製サイズ着てんのかな?
岩谷くんだけ明らかに胴回りがフィットしてないし
パンツの丈も長めどころじゃなく長いし
オーダーでまともなの作れよって言ってやる奴いないのかな