「検証IR」批判殺到! 立大カジノ講義の内幕

三品純 By 三品純

2024年に開業予定の IR施設。今夏にも国・自治体が基本方針を策定・公表し、来年春に自治体が業者を選定する。そして2021年に全国で3か所の自治体&事業者が決定するというスケジュールだ。そこで各国のカジノリゾート企業はIR事業者を狙い、日本国内でPR活動を続けている。そんな中、立教大学(東京都豊島区)は7月6日、マカオ大学と共催で「ビジネスモデルとしての日本型IR」を開催する予定だった。だが学内外からの批判を受け登壇者・会場が変更。改めてIR施設、カジノ事業に対するアレルギーを示す結果となった。

同シンポジウムの開催がアナウンスされるとSNS上を中心に批判が殺到。特に左派の有識者、社会活動家らを中心に中止を求める声が強まった。こうした反発を招いた背景としてメルコリゾーツ&エンターテインメント、ギャラクシー・エンターテインメント・グループの役員の参加があるだろう。講義や学術的シンポジウムというよりも実質、業者のプロモーションという点が反発を招いたようだ。また当初、豊島区はシンポジウムの後援に名を連ねたが「内容が推進派寄り」として中止した。

一方、立大内部でも反対の声が起きた。同大教職員組合『組合NEWS速報』によれば4月25日、部長会でシンポジウムが承認された際、登壇者は「マカオ大学教授3名、カジノコンサルタント/ライター1名」だった。しかしその後、登壇者が変更。部長会の了承がないまま、IR推進当事者(カジノ企業、観光庁職員)が登壇することになった。

その後、シンポジウムが報道され話題になると6月27日の部長会で学内での開催中止、共催とりやめが決定した。翌日、中止ではなく「内容変更」として会場が立大からホテルメトロポリタン池袋になったと発表。 『組合NEWS速報』ではこの変更プロセスも不透明であるとして問題視されていた。当初、シンポジウムの取材を申し込んだ時分はメルコリゾーツ&エンターテインメントからローレンス・ホー会長が登壇予定だった。日本のIR事業に積極的に売り込むカジノ企業のトップだけにどんな話をするのか興味深かったが、結局、会長兼CEO付チーフオブスタッフのケリー・アキコ・タカハシ氏が代役になる。

想像以上にIRに対する抵抗が強かった。確かにIR整備法自体、成立プロセスが強引で拙速だった点も否めない。しかしもう同法は成立しており、カジノと向き合わなければならない。もう拒否できないのだ。ところが反対派の人々は語るも、聞くもご法度という態度だ。関連行事に対しては「やめろ」「中止だ」を連呼する。

しかしここに至っては国やカジノ事業者の主張を聞き、思惑や狙いを分析することが先決ではないか。仮に立大シンポジウムの内容が変更になったとしても目の前に「IR事業」があることには変わらない。

パチンコと酷似「地域貢献」 アピール

ビジネス寄り内容かと思いきや、話は安全性とギャンブル中毒対策が主だった。

シンポジウムはマカオ大学アジア太平洋経済経営研究所のジャッキー・ソウ所長が開会挨拶をした後、国交省観光庁・祓川直也はらいかわなおや審議官が 基調講演に立った。 祓川氏は義父、ご息女とマカオのカジノ施設に私費で訪れたことを報告。非常に安全で清潔な施設であったことをアピールしていた。この辺りは役人にありがちな安全アピールというものだ。そもそもシンポジウムに反発が起きたのも推進派の中心、祓川氏の登壇が大きい。

家族旅行でマカオを旅した経験を語る祓川審議官。安全を強調するが…。

推進派の官僚だけにIR効果をアピール。2011年にIR施設を開業したシンガポールは2009年から2017年の間に外国人旅行者数91%増、外国人旅行消費額111増、ホテル客室単価14%増になったことを報告。また投資規模5000億円から1兆円の施設を民間の資金で建設できること、カジノは宝くじ、競馬など公営競技よりもギャンブルの還元率が高いことなどのメリットを挙げた。

その後、 メルコリゾーツ&エンターテインメント、ギャラクシー・エンターテインメント・グループの役員が続けて登壇したが、彼らの話から日本のパチンコとの共通点を感じざるをえなかった。

社会貢献を強調するメルコのケリー・アキコ・タカハシ氏。

メルコの ケリー・アキコ・タカハシ氏が強調したのはカジノ事業のメリットというよりも同社の社員教育やCSR活動が主だ。おそらく日本国内でのカジノアレルギーを意識したものだろう。今回の内容変更もカジノに対する反発からだ。この点、事業者が考慮しなかったはずはない。

とにかく安全性を強調するのが印象的だ。最新の顔認証システム(FRS)によって導入以前は入場制限が課された人物の特定件数が7年間で2件だったのに対して、FRS導入後は3年間で36件になった。また海外の要注意人物の来場についてFRS導入以前は7年間で2177件、導入後は69431件に伸ばしたという。

データ的にFRSの効果があることはよく分かった。しかしカジノ施設は「安全」という割に入場制限人物、要注意人物など「怪しい利用者」が存在する点も気になる。もちろんカジノ施設=犯罪増加という短絡的な物の見方もできないが、しかし犯罪の温床があることも事実だろう。それからタカハシ氏の特徴的だったのは社会貢献、地域貢献をアピールすることだ。特に女性活躍推進、青少年育成、こうしたキーワードは右派・左派問わず弱いのではないか?

2017年、中国大陸南部に大型台風「ハト」が直撃したが、この時、メルコは4億2100万円の支援を行った。また奨学金、文化支援事業、地元企業からの物品購入などメルコが地域・社会貢献をしている点を強調。「しない善よりする偽善」と言っては失礼だが、ギャンブル事業者が社会貢献や慈善事業をアピールするのは世界共通のようだ。

日本のパチンコが換金する際の「三点方式」はもともと換金業務を大阪身障者未亡人福祉事業協会に委託させたことが始まり。 現在のパチンコ業者も雇用以外にも福祉、環境活動などCSRに積極的だ。 ここでは未亡人、高齢者、障害者ら社会弱者を換金業務に雇用するという「社会貢献」を口実にした。あるいはかつては「一日一善」などのCMで公益・福祉事業を宣伝した旧日本船舶振興会(現・日本財団)も同様だろう。

メルコの主張は日本のパチンコ業者、競艇などのギャンブル業者と酷似していた。ギャンブルの免罪符的に社会事業をアピールする意図が透けて見える。もちろん業者の「努力」も評価すべきだが、ただ社会貢献があったところでギャンブルがもたらす弊害は否定できない。

台風後、メルコの支援活動に対して被災者からお礼のメッセージ。日本でやったらわざとらしく見えるものだが文化の違いか。

日本でカジノ施設が開業した場合、6千円の 入場料を支払うことになる。ところがパチンコについては入場無料で短時間で数万円を失うこともありえる。パチンコの方が本来はよほどリスキーなようにも見えるが、現状は野放し状態にある。むしろ社民党・元党首の土井たか子氏などはパチンコ文化人として「庶民派」のように扱われたこともあった。

こうした経緯を考えるとギャンブルの危険性をIRだけに転嫁するのもおかしな話ではある。パチンコや競馬・競輪・競艇は容認できて、カジノは拒否反応が強いというのは単純に「未知なるもの」への恐怖心だろうか? いずれにしてもカジノに対するアレルギーは簡単に払拭できないだろう。だからこそ今後、こうしたIR業者主導のシンポジウムやプロモーションの機会は増えていくはずだ。

高度な規制がIRの成功のカギという。しかし娯楽に「規制」が前提というのもおかしな話である。
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三品純

三品純 について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

「検証IR」批判殺到! 立大カジノ講義の内幕」への4件のフィードバック

  1. アバターシュー

    パチンコや公営ギャンブルの方が問題に決まっている。パチンコはどの町にもあり、公営ギャンブルはネットでどこからでも賭けられる。オンラインカジノというグレーゾーンギャンブルはすでにある。ランドカジノに反対している人たちは、競争相手となる韓国カジノ業者から活動資金が出ているのだろう。土井さんのパチンコアピールだって、総連の利権と深い関係がある。日本に三ヶ所しかなく、入場料が6000円も取られるカジノにギャンブル依存性が入り浸るのは、不可能である。彼らはすでに、パチンコパチスロ公営ギャンブルネットカジノブックメーカーで博打にどっぷり浸かっている。カジノを目のかたきにするのは茶番もいいとこだ。反対したいのは、ギャンブルではない。反対者は既得ギャンブル権益の犬なのである。ギャンブルを根絶したいなら、まずはパチンコと競馬反対のデモでもやれ。

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  2. アバターバカはとっととしね

    珍しく記事はまともだが、コメント欄にドアホが蛆虫のようにわいているのが無念。

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