SNS発の過激ユーザーによる暴行事件が発生だ！　仙台市内で２日、SNSでトラブルになった男性に怪我を負わせたとして佐々木健資容疑者が暴行で逮捕された。同容疑者はフードバンク仙台でボランティアに関わる一方、SNS上で特定ユーザーを攻撃してきた。釈放後も仲間らとＸで発信し続けているから驚きだ。

取材対象と つながっていた！

「SNSでつながった人物（ユーザーＡ）から突然、“死ね ”や“ 殺すぞ”というDMが何度も送られてきます。警察にも相談しましたが動いてもらえません」

とある女性ユーザーからこのような相談を受け関係人物を取材中だ。その矢先、犯罪被害者支援を行う楯の會代表・小野寺浩樹氏が２日、先の佐々木容疑者から暴行を受けた。こんな情報がもたらされた。やはりSNSが原因の事件だ。そして後にユーザーＡとも関係していることが判明した。話を進める。

フードバンクまーるちゃんは暑い中でも頑張っています。みんな寄付しましょうね📢📢📢 pic.twitter.com/kfYaRibjJP

— るの (@Tulip_Ice_Cream) July 30, 2024

佐々木容疑者はＸ上で「まーるちゃん」というハンドルネームでその他メンバーらと小野寺氏を攻撃し続けてきた。

「もともとSNS上で私に粘着してきた人物です。私の自宅に（佐々木容疑者が）やってきてドアをガンガン蹴って“ おい、出てこい”と叫んでいました。その時に暴行を受けたのです。その後、本人はスクーターに乗って逃げて行きました」

小野寺氏は全治４週間のケガを負った他、ドアの損傷などの被害を受けた。ともかく大事に至らなかったのが幸い。とはいえ改めてSNSに端を発した「直接行動」の危険性を痛感しないではいられない。

さらに驚いたことには佐々木容疑者は筆者が追跡していたユーザーＡとも交流があり、スペースなどで意見交換をしていたのだ。これは偶然とは言い切れない。

要するにSNS上の暴走グループは緩やかな連合でつながっている。しかも本名、素顔を知らなくてもいざ仲間がトラブルになったら異様な結束力で攻撃に参加。そして矛先を見つけ罵倒、中傷することでさらなる連帯感を生む。

右派左派のイデオロギーでは割り切れない点はつばさの党と共通する。仮に党派性や思想信条を同じくしても攻撃対象になりえるのだ。

フードバンク 仙台での活動歴

スペースなどで語る佐々木容疑者の肉声は穏やか、面白キャラのように感じる。SNS上では地域型スーパーチェーンの公式ボディガードと自称していた。Ｘ上で名指しされたスーパーマーケット責任者によると「公式ボディガード？ありえません」と否定。悪ふざけで投稿したのだろう。

単純に悪ノリキャラのような印象を受けるが一方で社会活動も行ってきた。報道では「無職」になっていた佐々木容疑者。周囲には「フードバンク仙台」（仙台市青葉区五橋）のスタッフと名乗っていたという。

フードバンク仙台の活動は同市議会でも取り上げられてきた。議事録でも好意的な意見が多数、確認できる。仙台市環境局によるとフードバンク活動支援助成金として100万円を支給している。この通り、市内の社会団体としては実績を挙げており、大手メディアからの取材を受けることも少なくない。

フードバンクの6割以上で寄付減少 “危機的状況”支援呼びかけ（NHK）

同団体の協力企業である東急不動産ホールディングスのHP上で佐々木容疑者が紹介されている。フードバンク仙台での活動についてこう抱負を語った同容疑者。

「困ったときに相談できるフードバンクのような支援活動があるということを、もっと広く知ってもらいたい。そして、みんなが安心して暮らせるように、これからも困っている人を少しでも手助けしていきたい」

佐々木容疑者の発言内容は表面的には綺麗な言葉が並ぶ。

しかしそれは一面。「おいコラァ！だとか恫喝する時は声がまるっきり変わりますよ」（小野寺氏）

すでに釈放され今後は在宅捜査になる。仲間、支援者の間では釈放を「勝利宣言」のように喜んだ。しかし在宅捜査の場合、国選弁護人が選任されず自分自身で弁護士に依頼しなければならない。もちろん費用はかさむ。生活状況が芳しくない佐々木容疑者にとってむしろ状況は悪いはずだ。

実は彼自身が困窮者でフードバンク仙台に住み着いていたという証言もあった。

なんかいる🤣 pic.twitter.com/umrIzpOefO

— まーるちゃん (@uFTrSIlLpwSMaLG) August 1, 2024

「まーるちゃん」とは実は飼い猫のこと。８月２日の投稿の写真はフードバンク仙台で「寄付の移動整理中」に撮影したと自身が投稿した。飼い猫とともに団体内で住んでいたという可能性だ。同団体の川久保尭弘理事はこう説明する。

「スタッフ？　正規の職員ではありません。あくまでボランティアの一員です。一部ネットにはそうした情報が飛び交っていますがありえません。女性に伴われ本人が謝罪に訪れ“申し訳ありません。もうフードバンク仙台の活動を辞めます ”というので、私からも“ 戻るのは難しい”と伝えました」

次いでSNS上での言動について同理事は「プライベートのことなので関知していません」と話した。同氏は不知としたが、謝罪に同行した女性もまた佐々木容疑者のＸ仲間という。Ｘ人脈が家族、友人と同等の存在なのか。

驚くのは釈放後も攻撃を続けていることだ。

「（佐々木容疑者は）別のアカウントを使ってスペースに入ってきては“殺すぞ ”などと言ってきます」（小野寺氏）

それも釈放後から間もなくのこと。懲りていないという他ない。これはつばさの党も同様に「逮捕」が制御装置として機能していないのだ。

同種事案の被害女性によれば「警察が後手」と批判する一方、別の被害女性はSNS由来の事件についてこんな印象を語る。

「私が相談に行った時に警察の方が“ 一日の大半がSNSの対応で参っていますよ”と嘆いていました。それだけ件数が多いのと新しいタイプの事件なので対策がまだ確立されていないのでしょう」

後手というよりも関連法や対応策が未整備という状況も理解しておく必要がある。

実際にSNSに投稿したものでネット内を飛び越え実際に直接行動に至る事件は起きている。ただのレスバトルでは済まなくなったのが実情だ。それに加えて警察の捜査ですら「抑止力」にならなくなったのは恐ろしい。単なる暴行事件ではなくトクリュウ（匿名・流動型犯罪グループ）予備軍として受け止めた方が良さそうだ。