安倍元首相 一周忌【前編】右の 幻想、左の ガス抜き 安倍ロスという 不毛に 終止符を!

カテゴリー: 政治 | タグ: | 投稿日: | 投稿者:
By Jun mishina

故・安倍晋三元首相暗殺から今月8日で一年。憲政史上最長の通算在任日数を記録した安倍氏にいまだ“安倍ロス ”が続く。それは「安倍さんがいたら~」という右の幻想、かたや故人に対しても安倍バッシングで溜飲を下げる左の軽率。安倍ロスの面々の慕情と憎悪は一体、どこに向かうのか。安倍晋三をめぐる現状と惨状をレポートする。

三笠霊苑に留魂碑が建立された

「安倍ロス」

通常、ロスは「ペットロス」などのように失った喪失感や悲しみで落ち込み、悪化すると心身症などを発症する可能性もある。しかし安倍ロスの場合はシンパ・アンチ双方に共通しており、美化・憎悪問わず死後でも安倍氏に執着する現象だ。

現在でも安倍氏に対して両陣営から陰謀論から誹謗中傷が飛び交う。“ 死者に鞭を打つ”行為が平然と行われるのも安倍ロスの一環だろう。

今月2日、自民党奈良県連有志らによって三笠霊苑(奈良市)に留魂碑が建立された。除幕式も報道され関係者が碑石を投稿したが、もちろんSNS上では悼む声、揶揄する声が錯綜した。

故・三宅雪子氏の晩年をめぐるレポートで登場した来夢さん。

明日8日、事件現場の西大寺サンワシティ前に献花台が設置され一周忌が執り行われる。相当数の参列者が訪れると予想され地元警備関係者によるとテロ対策上、献花以外のお供え物は不可だという。また反安倍、反自民の一派が周辺で妨害、抗議行動を起こす可能性も高い。現地からは戦々恐々の様子が伝わった。

もちろんマスコミ的には絶好の行事で、そもそも「安倍晋三」というキラーコンテンツであり、また抗議側に立てば少数者めいた人々の“ 寄り添いしぐさ”ができるというもの。

だが関係筋の視点は全く別にある。現地政治記者の解説。

「一周忌を主宰するのは『安倍晋三元内閣総理大臣感謝と継承の会なら』で、事務局は高市早苗県連会長の事務所になっています。担当者は高市さんの公設第一秘書、木下剛志氏です。とても存在感がある秘書で報道でもたびたび名前が挙がりますね」

先の統一地方選、奈良県知事選挙で高市氏と奈良県連は元総務官僚の平木省氏を推したが落選。同選挙は自民党本部が荒井正吾前知事の出馬撤回を説得できずに候補が一本化できなかったという経緯がある。木下氏も現在の党本部に不満を持ちTwitter上で激しく批判した。

一方、高市氏はご存じの通り、安倍氏の薫陶を受けた政治家で、現在は無派閥だがもともとは安倍派(旧町村派)所属。2012年、安倍氏が総裁に返り咲いた際の推薦人でもある。今年3月の放送法内部文書問題で野党、マスコミから激しく追及を受けて一時は減退した感もあったが、本人も周辺も次期総裁候補への意欲は強いだろう。

「つまり一周忌に党本部から誰が来るのか注目されています。安倍人気ではなくて、高市氏の呼びかけにどれだけの自民議員が応じるのか今後の政界を占うと思いますよ」(前記者)

明日の一周忌は単なる式典ではなく安倍後継者レースにとっても大きな意味を持つようだ。

不満が高まる 自民党支持者、行き場のない アンチ

安倍晋三という強大なリーダーを失ったのは支持者、アンチ双方に大きな影を落とした。

2019年、札幌市で演説中の安倍晋三首相(当時)に罵声を浴びせ、警察官に排除された男女が損害賠償を求めた二審の判決が6月22日に下され、男性については適法、女性については違法とした。

安倍ロスはもうオカルトの領域

記者会見に応じた原告男性が「安倍の亡霊にやられた」と語ったのは安倍ロスの極みだろう。またヤジ訴訟について原告側について報道するマスコミもまた安倍ロスの渦中にある。仮にこれが立憲民主党や共産党議員へのヤジで起きた場合、果たして「表現の自由」という擁護論は起きただろうか。

「アベ政治を許さない」この一点だけでマスコミも野党、市民団体も一致し共闘できたが、最大のターゲットを失った。今後、その拳はどう振り下ろされるのか。残念ながらそのフラストレーションを晴らせる政治家は他に見つけられない。

だがガス抜きも必要だ。高まる不満はいずれ内に向かう。何らかの形で外的要因は必要だ。

そこで行き場を喪失した安倍ロスにも“避難所 ”は存在する。やはり「アベ政治を許さない」支持者が多いであろうれいわ新選組は6月18日、「増税反対!国会を揺らそう。大阪デモ」を開催した。ここで攻撃対象になったのは竹中平蔵総務相だ。「竹中平蔵に懲役100年」というあり得ないスローガンを掲げる山本太郎代表とそれに狂喜する支持者たち。反安倍デモや集会でも酷似した光景をたびたび目撃してきた。

かつては構造改革を進めた竹中氏だが現在は評論家、経済学者とはいえ一民間人に過ぎない。このタイミングで竹中氏に政治責任を問うのはどういう意味を持つのか。単純に「安倍晋三」に代わり得る存在は竹中氏ぐらいだろう。竹中氏については左右、保革双方から批判や反発が存在するが、具体的に同氏に対してどう責任を取らせるのか。

逆に安倍亡き後の保守派の混迷と動揺も明確に見て取れる。現状、清話会(安倍派)に安倍氏を継承するにたる政治家はいない。安倍派議員も小粒だ。

「安倍さんの秘蔵っ子の稲田朋美元防衛相への落胆はもちろんのこと。萩生田光一政調会長は政局や政策というよりも都連会長として次期総選挙の候補者選びに没頭。保守層に共鳴されるような強烈な理念を感じません。LGBT法の成立でも保守層から批判されました。また派閥の領袖と目される世耕弘成参院幹事長も本来は衆院和歌山一区の補選で自身が推した候補が維新に敗北。最後は自分で支援者に電話をかけ投票をお願いしたほどでした」(党関係者)

とても保守層の期待を担える面々ではない。

また当の岸田首相といえば安倍氏ほどの勝負強さもないようだ。

「日本テレビ、読売新聞、フジテレビなど有力メディアが解散風を煽ってくれたのに解散を決断できませんでした。“ 自民党一部から6月解散に踏み切った場合、40~50議席を減らす”という眉唾話を真に受けてしまったと聞いています」(同前)

自民有力者に強力なリーダーが不在なのはこうした証言からも一目瞭然。逆にいえばそれだけ安倍氏は突出したリーダーだったのだ。そして今でも安倍ロスは続くが、しかしいくら叫んだところで政治も経済も向上しない。

一周忌開催によって不毛な安倍ロスに終止符が打たれるのか見届けたいところだ。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

wp-puzzle.com logo

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)