怪しげな保守系インフルエンサーは枚挙にいとまがない。中でも「元国連理事」を自称し活動する大野寛文・伊勢市議は疑惑のオンパレード。伊勢神宮の奉仕団体「公益社団法人日本青伸会」を乗っ取ったはいいが、不透明な手続きや杜撰な運営、怪しい経歴などで批判が高まる。本人はどこ吹く風で衆院選候補者の応援演説に立つ一方、青伸会は内閣府から措置勧告を受け危機的な状況である。(写真はユネスコ前で記念撮影する大野氏。ユネスコとは無関係)
荒廃した本部事務所にポツンと元理事長の杖
これまでの流れ。元国連理事を名乗る大野寛文氏が伊勢神宮の奉仕団体「公益社団法人青伸会」を乗っ取った。また大野氏は高額な神宮ツアーを開催して不当な利益を得ていた。こうした行為に対して神宮側は大野氏を事実上の出禁とした他、同会の特権的行事「庭燎奉仕」(年末年始のお手伝い)の開催を禁じた。
さらに同会が「公益法人認定法」違反の状態であることから、昨年12月末に内閣府は大野寛文理事長宛てに是正を求める勧告書を通達した。同会はかつて松下幸之助ら大物も名を連ねた伝統ある団体だ。それが元国連理事という意味不明な経歴を持つ怪紳士・大野寛文氏によって終焉を迎えようとしている。
【緊急警告】「元国連理事を自称」「伊勢神宮奉仕団体を乗っ取り」大野寛文・伊勢市議にご用心


東京・神田にあった青伸会の事務所に行ってみた。昨年、立ち退きを迫られ現在はもぬけのからだ。だがドアには貼り紙が残り、元理事長・久本恵章氏の私物とみられる杖が放置されていた。年末には大野氏が関係者に手伝いを依頼して引っ越し作業をしていたという。
本来、内閣府から勧告書が通達されるのは恥ずべきことだが、大野氏本人はYouTube上で保守系インフルエンサーらと戯れる日々。大野氏は衆院選東京24区から立候補した陰謀論系インフルエンサーの深田萌絵氏の街頭演説に登場した。
ドン・キホーテから個人事業主、そして国際連合経済社会理事会という不思議な経歴。ところが妙なもので参政党、日本保守党、ゆうこく連合、日本誠真会といった新興政党の支持者らが大野氏に心酔している。信奉者たちに聞いてみたいのだが、国連理事というバックボーンを活かした独自情報がただの一度でもあっただろうか。大野氏の履歴書(下記参照)からしても、国際政治に精通するという素養が全く見つからない。

大野氏に海外の要人、著名人と交流やコネクションがあるとすれば自身が主催するタイツアー、自身が代表理事を務める国際交流プロジェクト「HANAMICHI SELECTION」の活動だ。SNSで海外人脈を誇示するが国連とは無関係だ。なお「HANAMICHI SELECTION」についてはいずれ別稿で触れる。
大野氏の信者はいわゆる陰謀論系保守。中国の工作員、国際資本、DS、ユダヤ組織など話が壮大で眉唾話であるほど、逆に信頼性が高まるという不思議な思考パターンの持ち主だ。
そして常に新しいキャラクターを求めているのも特徴的。もっとも新進気鋭の保守論者といった手合いは出ては消えた。おそらく大野氏もそうした消費型保守キャラになるだろう。しかしその前に伊勢神宮に泥を塗った、また神宮を利用し不当な利益を得た疑惑は世に広めておかなければならない。

新幹線が運休という嘘を平然と吐く
息を吐くように嘘をつく。これまで大野氏周辺を取材してきて率直に感じたことだ。1月25日(日)に都内で講演会が予定されていたが、直前の1月23日(金)に中止が発表された。大野氏は伊勢市役所付近で伊勢神宮愛好家や民族派活動家から問い詰められたことがあり、講演会での直撃を恐れてのドタキャンだろう。驚いたのはその理由が「新幹線の運休」。大野氏は三重から上京するというのだが当時、東海地方は週末にかけ積雪予報があった。大雪で新幹線がストップというのだ。
しかしJR東海に確認したが、運休という情報は皆無。明らかに「嘘」「デマ」だが、それを大野氏や主催者側は平然と発表できるのが不思議だ。また主催者の英霊の名誉を守り顕彰する会・佐藤和夫会長にも事情を尋ねてみたが、新幹線が運休という話を全く疑っていなかった。しかし肯定的に解釈すればこれも大野氏の「人徳」なのだろう。大野氏には自分を売り込み、信じさせる才能がある。
なにしろ伊勢神宮、神道に全く無縁だったが短期間で青伸会の理事長に就任した人物だ。

議事録、監事の捺印を偽造


現在、青伸会は財産目録等の提出義務違反、必要書類の未提出が相次いだ。そのため青伸会は昨年12月24日、公益法人認定法に基づき内閣府から措置勧告を受けた。それでも支持する理事が存在するというから驚く他ない。先に述べた通り人を信じ込ませる特殊な才能だ。
しかしいつまで口八丁手八丁が通用するか。行政指導に対しても得意の「元国連理事」の看板を持ち出すわけではあるまい。
関係者によれば大野氏は署名・捺印偽造をした書類を内閣府に提出していたという。ある役員が提出した書面「公益認定法等に基づく法令違反行為の報告書」が詳しい。
問題になったのは昨年3月27日に開催された理事会の議事録。内閣府に提出されたものだ。ところが肝心な議題が内閣府には報告されていない。

第5号議案は大野氏自身の問題だ。正式な事業以外で大野氏が私的に開催している伊勢神宮ツアーが「外部から見て分かりにくい」という指摘があった。青伸会会員からクレームが入ったことで大野氏の私的な集金が問題になったのだ。そこで神宮ツアー開催の場合は主催者を大野氏以外にすることが決議された。
不可解な会計について一例を挙げよう。第78回庭燎奉仕・奉納(2023年)で大野氏は参加者から総額1738万円を集めた。男性は参加費55万円(22名)、女性33万円(16名)という超高額ツアーだ。このうち青伸会に入金があったのは634万8千円。その差額は1103万2千円だが、大野氏から使途についての説明はない。こうした行為はあくまで「一例」ということを強調しておく。
参加者によれば大野氏から「特別な神事のために通常は100万円だが、自分のコネで今回に限り特別枠で50万円で参加できる」と説明を受けたという。
ところがそうした闇は報告されない。しかも「上記議事の経過の要領及びその結果を明確にするため、本議事録を作成し、出席した理事長および監事が次に記名捺印する」との結語の後で監事が捺印したことになっているがこれは偽造。同監事は議事録を確認していない上、捺印も承諾しておらずそもそも同氏の印鑑ですらない。ある関係者は印鑑について「事前に用意したもの」と証言した。
私文書偽造の疑いすらある一件だ。
しかも公益法人認定法64条では申請書や提出書類に虚偽があった場合、30万円以下の罰金と定めている。下手をすれば公益認定を取り消されかねない状況にある青伸会なのだ。もっとも大野氏にとって青伸会とは思い入れがある団体でもなければ、伊勢神宮や神道についても人寄せ道具に過ぎないだろう。
「日本人の心のふるさと」と人々を魅了してきた伊勢神宮の名に大野氏は泥を塗った。ところが彼を支持しているのは伊勢神宮に敬意を抱くであろう保守層という矛盾。そんな面々は今日も大野氏が振りまく尊大な話に心酔しているであろう。



