部落差別解消推進・部落探訪(82)
三重県伊賀市柘植町前川

By 鳥取ループ

伊賀と言えば忍者。忍者と言えば上野が有名だが、筆者から見ると上野よりも柘植つげの方が忍者が出てきそうな秘境感がある。そして、名阪国道の上柘植ICの近くに部落がある…というよりもインターチェンジが部落内にある。それが、今回訪れた柘植町前川まえがわの部落だ。今回は、地元をよく知る方に案内して頂いた。

1934年の記録では59世帯、378人。生活程度は悪くなかったらしい。

この前川部落については「伊賀市同和地区生活実態調査からみる主な実態」として、妙に詳しい資料が伊賀市によりインターネットで公開されている。それによれば、公営住宅が108戸、持ち家が142戸とあるので、過去の記録とはかなり開きがある。なぜここまで戸数が増えたのかは不明である。

この、柘植民俗資料館は高台にあり、そこから部落を一望できる。

とても広々としていて、明らかに都市型ではなく、農村型部落であることが分かる。

遠方には大規模なニコイチ群があり、これは期待できそうだ。

なお、住所表記は「柘植町」または「上村」となる。どこからどこまでが前川の部落の範囲なのかは、なかなか分からない。地元では柘植川から南と言われるが、もちろん柘植川の南が全て部落というわけではない。

ここが上柘植団地。1986年から87年にかけて建設された、もっとも新しい同和住宅である。ただ、位置的には部落の外にある。

ここは萬壽寺。上柘植団地の近くにあるが、曹洞宗の寺で、部落の寺ではない。しかし、この寺は前川部落の歴史に重要な役割を果たしたのだという。案内人によれば、かつて前川部落の住人はことごとく名字に「前」を含んでおり、それが部落民の印のようになっていた。しかし、この萬壽寺の住職が改姓を働きかけたという。そのため、現在では前川部落の住民の名字はばらばらになっているということだ。

ちなみに、萬壽寺の境内には松尾芭蕉の墓がある。芭蕉と言えば伊賀上野出身と思われているが、柘植の人に言わせれば、芭蕉の本当の出身地は柘植なのだという。寺の周辺は部落ではないが、松尾という名字の家が多い一角があり、そこが生誕地とされる。

さらに部落の中を探訪すると…

公園に「いじめ・さべつをみんなでなくそう!!」という大きな看板が。裏を返せば、この地には「いじめ・さべつ」があるということだろう。案内人によれば、とあるリベラル系の県議会議員は、高校生の時に前川の同級生を部落出身と馬鹿にしたことが解放同盟に知られ、自主退学したという過去があるという。

そして、ここが人権センター。

公営住宅の入居者公募の案内が張り出されてあったが、わざわざ「同和公営住宅」と大きく書かれているあたり、本当に広く公募しようという意志が感じられない。

この施設には水平社魂が入魂されている。

このヘルメットをかぶって歯を食いしばっている人のような絵は、いったい何を表現しているのだろうか?

ここは墓地。南無阿弥陀仏という石碑があるので、浄土真宗が多いのだろう。

墓地の近くに小規模な公営住宅群が。これは石畑住宅と考えられる。1981年から1982年にかけて作られた。

そして、ここが最大規模の公営住宅群である大土住宅だ。作られたのは1970年から73年と最も古いが、見た目からはあまり古さは感じられない。市の資料によれば1986年にニコイチを1棟1戸化したとあるので、その時に外観もリフォームしたのだろう。

途中で見かけた記念碑。農地の改良事業のものだろうか?

前川部落には空き地や廃墟は少なく、廃墟らしい廃墟と言えば、この物件くらいしかなかった。

これは老人憩の家。

別の高台に明照寺というお寺を見つけた。宗派は浄土真宗本願寺派。つまり西本願寺だ。

ここも大変見晴らしがよい。明照寺の付近が昔ながらの前川の集落だ。ご覧の通り、見た目は伊賀のごく普通の農村である。

部落はこの寺の檀家が多いのだが、住職によればこの寺が出来たのは昭和初期のことで、比較的新しい寺なのだという。部落にはもともと寺がなかったようだ。

最後に丸内住宅を訪れた。ここが作られたのは1978年から1979年。ニコイチではなくヨンコイチ形式の住宅だ。すぐ間近に名阪国道があり、インターチェンジ、コンビニ、ガソリンスタンドも間近だ。車があればとても便利な場所と言える。

案内人によれば、未だに前川に行くというだけで、あそこには気をつけろと言われることがあるそうだが、少なくとも周辺に比べて経済的な格差を感じることはないという。伊賀市の調査では低所得世帯が市全体に比べて多いとされているが、ここが完全に郊外の農村であり、高齢化が進んでいることの影響が大きいと思われる。

同和事業のシンボル的なものがなければ、ここが部落だとは全く分からない。あとは気持ちの持ち様の問題ということだろうか。

部落差別解消推進・部落探訪(82)
三重県伊賀市柘植町前川
」への18件のフィードバック

    1. 鳥取ループ 投稿作成者

      まだ本人に聞いてないし、裏が取れたわけではないので詳しくは申しませんが、ヒントは福島瑞穂です。

      返信
  1. R

    ここまで露骨に反差別を訴える同和地区は珍しいのでしょうか?

    ニコイチ住宅群は壮観さがあります。

    返信
    1. 鳥取ループ 投稿作成者

      確かに、この大きさのスローガンはめったに見ません。他に見たのは三郷町くらいでしょうか。

      返信
  2. アンタッチャブルマニア

    記事とは関係ありませんが、「鳥取ループ」というお名前の由来はなんですか?

    返信
  3. 滋賀太郎

    また滋賀の長浜市と米原市と大津市
    の部落も探訪してほしいです。
    成り立ちが気になるので…

    返信
    1. 鳥取ループ 投稿作成者

      バックナンバーに長浜市桜町があります。米原、大津も機会があればやります。

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  4. 斉藤ママ

    今の部落行政が形骸化しているのは、
    被差別者の生活がすごかったので、最初からお役人が利用しようと
    考えていた事があるんではないかと思いますね。

    オウム真理教には、精神障害者や家庭不和など、
    行き場がない人が多かったという話しを聞きました。
    秀才には弱者を何とかしたいという気持ちと利用したいというのと
    両方ある感じがします。

    返信
    1. 斉藤ママ

      北海道の人に、
      アイヌ予算は、障害者のために使われていた、という話を聞きました。
      地方に回されているものは、行政職員に任せていて厳しくチェックしない
      ルールがあるようです。

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  5. ヘルメットをかぶって歯を食いしばっている人間のように見える絵と、それに添えられたlet’s notice people’s weakness…
    本当に何を表現したいのか謎ですね…
    少なくとも不自然、というか完全に動詞noticeの使い方を間違っているので、ネイティブ教師(講師)に添削してもらっては如何でしょうか?

    返信
    1. 鳥取ループ 投稿作成者

      難解なものが持て囃された時代の遺物かもしれません。
      たぶん、人は傷つきやすいものと言いたかったのかも。

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    2. ウマル

      完全に間違っているとは言えないでしょう。
      普段の口語では使いませんが、Let’s notice~という表現はあります。
      聖職者が信者を諭したりする場合などです。
      今回の表現でも、訓示のようなものですから、間違った表現とは言えないでしょう。

      返信
      1. >ウマル様
        私はアメリカ生活も長いですが、そのような表現は耳にしたことがありませんでした。もしよろしければどこで目(耳)にしたか詳しく教えていただけないでしょうか。(都市・宗派など)

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  6. ウマル

    上にあるように多く用いられる表現ですが、中でもReading Through Matthew, Encountering Godというタイトルの本の以下の文が、ご指摘の文構造と同じです。

    Let’s notice the great gentleness and honesty of Jesus.
    Let’s notice people’s weakness.

    (誰々の)(性質について)理解しよう。心に留めておこう。胸に刻もう。

    誰しもが何らかの弱味を持っていることを理解しよう。(だから、他人の弱味について悪口を言ったり仲間外れにしないこと!そんなあなたも何かしら欠点はあるでしょ?)

    もしくは、

    人というのは、か弱く傷付きやすいものだということを知っておこう。(あなたの些細な言動が相手を深く傷付けるかもしれないので、そういうことはしないこと!)

    こんな感じでは?
    ただ夕焼けのなか海辺で歯軋りする人影が意味するところは分かりません。何か絵に似たような部落差別事案的なモノが過去にあったのか。どうでしょうね。高校生友の会に聴けば分かるかもしれませんが。あとなぜ伝わりづらい英文なのかも気になります笑

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