北朝鮮擁護論から見えた空疎な”香山リカ話法”

カテゴリー: ウェブ記事 | タグ: , | 投稿日: | 投稿者:
By Jun mishina

スポーツの祭典という建前は何処へやら、北朝鮮の外交ショーになってしまった平昌五輪。国内外から“平壌五輪”と冷ややかな声も挙がっている。その一方で、相変わらず北朝鮮擁護を繰り広げる政治家、文化人も存在し「話し合いで解決」などと常套句を繰り返す。そして「精神科医」というよりも今や「活動家」と化した香山リカ氏もその一人。しかしそのお説を聞けば聞くほど、空疎な香山リカ話法ばかりが際立ってしまうのだ。香山流の北朝鮮論とは―――。

何でも専門分野? 精神科医ってなんだ

昨年12月14日、連合会館で開催されたシンポジウム「米朝戦争危機と安倍政権」でのこと。本誌はこの音声データを入手した。参加者はこう話す。

「香山リカさんをはじめ、和田春樹・東大名誉教授、ジャーナリストの高野孟といった市民集会ではお馴染みのメンバーが登壇しました。珍しい人と言えば、当初、アントニオ猪木参院議員がビデオメッセージで参加するという予定でしたが、直前になって中止。あとは俳優の菅原文太の妻、菅原文子さんも演説しました」

この顔ぶれからして、話の内容はお察しの通り北朝鮮ベッタリのポジショントークというわけだが

「菅原さんは、北朝鮮の船が漂着した時に捜査班が生物兵器対策のため防護服を着ているのを見て、関東大震災で朝鮮人を虐殺をしたのと同じことが行われている、と言っていました。それは違うんじゃないかと(笑)」

北朝鮮は、化学兵器、生物兵器の保有国だ。万一に備えるのは当然のことと思うが、漂着船の捜査に関東大震災を持ち出すというのも味わい深さすら感じる。その後、亀井静香元衆院議員が登壇。安倍首相にこう直言したという。

「トランプの北朝鮮に対するアクションを気をつけなきゃだめだ。あくまで話し合いだ。日本と北との間、拉致問題を糸口に交渉すると核ミサイルの話に引きずりこめんでいけるんだ」

次いで話に立ったのが香山氏。曰く

「こんばんは精神科医の香山リカです。今、亀井さんが日本は真の独立国じゃないという話がでましたが昨日、共産党の小池晃書記局長とお会いすることがあって、小池さんも同じことを言っていました。なぜ右翼が黙っているんだ。日本がこんなにアメリカにいいようにやられてね。共産党と右翼が手を組んで決起したらね、面白いねって言ったら(小池が)いいんじゃないのってすごい真面目な顔していって。それぐらい今、事態は非常に追い詰められていて、こういう集会で亀井さんが今みたいな発言されるとか、共産党が右翼と手を組むか分からないけどいわゆる右だ保守だ、革新だといっていられないまさに国難ですね。そういう事態なんだろうなというふうに思います。ナニ党だから右だからとか従来のカテゴリーにとらわれずにいいと思う人と一緒に組むのは、ある意味いいことというか、前向きっていうんですかね。と思いつつ、亀井さんがおっしゃったみたいに人類の危機という気もしますね。今、亀井さんがあくまで話し合いっていうね、力強いことをおっしゃって頂いてその点においてはみな同じ、結集できるんじゃないかみなさんも思われたんじゃないかと思います。しかし話し合いをするには落ち着いた気持ちで冷静にことにのぞまないといけないと思うんですがそれができない」

冷静に、というのはむしろ香山氏に贈りたい言葉ではあるが、ともかく話はご専門に移る。

「私は精神科医なので人の気持ちとか心理を考えてしまうんですが安倍政権、トランプさんを含めてやろうとしていることは私たちが冷静さを失わせるような印象操作、心理的な操縦、きつい言葉でいうと洗脳、という言い方もありますが、そういうことをしているようにも思えますよね。例えば一昨日、清水寺で今年の一文字という漢字が発表されますけど北というね、あれにはいろいろ言い訳のように北海道日本ハムファイターズに清宮選手がいったとか大谷選手がメジャーリーグにいったとかいろいろ付け加えていますが、それは後付けで北朝鮮の“北”というだけだと思うんですがね。今年の漢字が“北”というとそうだったかもしれないというかね。それぐらい恐ろしいこと、北朝鮮の脅威がクローズアップされて私たちにも染みつきますよね。Jアラートとか避難訓練だとか安倍さんが今回の衆院選でも今、国難にありますとおっしゃっていましたけど脅威を煽るような言い方をされる。多くの人たちはそう言われれば不安になりますよね」

清水寺の今年の漢字一文字は、日本漢字能力検定協会が1年の世相を表す「今年の漢字」を選定するもので、清水寺の貫主が揮毫きごうするもの。例年「今年の一文字」は、世相を反映するとは言えおおかたこじつけ。恐ろしいというほどでもなかろう。香山氏の言に沿えば、この行事も国家の洗脳行為のようである。長いが以下に続く。

「私は先ほど洗脳と言いましたけど、心理学の世界でよく使われる典型的な一つのスタイルでコントラストと言われるんですけど、どういうことかというととにかく不安を煽る、この世は地獄です、おしまいです大変だハルマゲドンがきます。ということを言って不安を煽った時点でも大丈夫、この教祖様がいます。これを信じれば助かるんです。恐怖と不安と救いとの対象を、コントラストをはっきりさせるほど、私たちはついすがってしまうわけですね。病気の時もそうですよね。恐ろしい病気と言われて、助からないと思いますでも大丈夫、この煎じ薬を飲めばもう助かります(笑い声)ついすがってますよね。恐怖を煽っておいて何かを出す、まさにそうですよね。北朝鮮といっておいて訓練をしているとしておいて、そこででもね、トランプさんがやってきてこの人が安倍さんと組んでいれば守られるとかね。不安を煽られるとついね思考停止に陥ってしまってあーじゃもうこの人たちにすがるしかないんだという風に鵜呑みにしてしまわざるをえない。だから国民が判断力がないからとか思考力がないとかだけではなく仕組まれて操作されちゃうんですよね。そうするとそっちを信じてしまう。説得とか勧誘とかで使われる心理術です。それを使われてしまっているという風に思うんですね。いったんその状態がねぇ、もういわゆる社会の中での狂信的な、デフォルトがスタンダードになってしまうとなんでもやりたい放題。大学で軍事研究をやっていますが、防衛庁(省)が大学に予算を研究予算をあげますよと言っているんですね。文部科学省が科学研究費というのを非常に減額されたり審査が通らなかったり、大学の研究費不足が大きな問題です。なので研究者は研究費が喉から手が出るほどほしいわけですね。それこそさっきと同じですよ。さあみなさん大丈夫です、私たちが用意しますた、といって研究費を出そうとしているんですね。それに対して日本学術会議という日本会議の下部組織ですか? なんてよく言われるんですけど違う違う(笑い声)。いろいろ検討して、声明を出して日本の科学者は軍事研究をしないって二回も声明を出しているんですね。それにも関わらず防衛庁(省)が予算を出してきたもんですからいくつかの大学や研究者は、手を付けちゃったんですね。それは追い詰められているから出されたら手を出しちゃったわけですね。だけど日本学術会議で前の2つの声明を踏襲しよう、つまり学者は軍事研究や防衛装備庁が出している研究費用に手を出さないでおこうという声明を出したんですね。ところが先ほどから言っている北朝鮮の脅威とか軍事同盟があるからそこにすがるしかないんだ、お任せするしかないんだという雰囲気の中でやっぱり若手の研究者はどうしてダメなの、この前も東大が防衛庁からの予算は使いません、という動きを見せたんですけどそれに対して若手の研究者は、いやインターネットでは国立の大学が国を守る研究をするのは当たり前だろ、それをやらないというのは国に反している、国立大学という名前を返上すべきだ、とかね平気で言う訳ですね。軍事研究とかある上の世代の方は、学者がやるなんてとんでもない条件反射的に生理的に思うんですが、北朝鮮の脅威とかその前は盛んに中国の脅威、サンゴ礁を取りに来ているとと盛んに映像を流したんですけど、そういうのに慣らされている若い人たちや学者はやらないほうが国民として義務に反しているとかそういう状況になってしまっているんですね。そういう中で私たちがどんな風にメディアを含めたトランプさんの登場と同時に出てきたフェイクニュース、偽のニュース、本当のニュースをトランプさんなんかはをあれはフェイクだっていいますよね。真実を流しているのに、あっちはうそだといいますが、そういう中で私たちが若い世代の人たちが危機を煽られてパニック状態になってすがるのはいけないと私たち上の世代が若い人たちに冷静さを取り戻してもらうそういうことが私たちに対する課題だと思うんですね。もちろんノーベル平和賞とか、授賞式で被爆者の方がスピーチをするとかそういう話し合いで軍事解決はいけないというアクションに日本人もかかわっている。しかしそれは報道されないという非常にあからさまなこともね起きています」

北朝鮮に関しての話が出てこない。なぜか話が大学の研究費用に飛んでしまった。話が飛ぶ飛ぶ。いやいや縦横無尽な論理が展開されていく。

「あるいは広島高裁で伊方原発が差し止めの仮処分という決定が下されました。一説では判決文を書いた裁判官は更迭されるとかあからさまなことをやりたい放題になっていく中であっちもこっちもやりたい放題なんだけど私たちどこに対して声をあげていいのかというのがありますけど上の世代の責任として事実はこっちなんだと冷静に指摘していくということがね。こういう集会もそうですけども最後に言いたいのは北朝鮮問題は憂いていますけど、私在日韓国人、朝鮮人あるいは琉球民族に対するヘイトスピーチ、差別扇動に対しても抗議や活動をしているんですけど、去年、ヘイトスピーチ対策基本法というのができて前は在日韓国人出ていけ、潰せとかとんでもないことを言っていたんだけどさすがにヘイトスピーチ対策基本法ができて死ね、殺せ、みたいなことを路上で叫ぶというのは控えるようになった。それはいいんだけど、今、彼らがヘイトデモをする時に北朝鮮への抗議デモなんだというのを言い訳に使っているんですね。北朝鮮抗議デモを開催しますとかね拉致に反対するデモですと言われるとそれに対してダメだと言いづらい。そういう許可を取ろうとするのに。しかし実際はヘイトスピーチデモで最初は「北朝鮮核兵器使うな」と一言ぐらい言うんだけど、あとは在日コリアンに対する「生活保護不正受給」しているとかデマに基づくヘイトスピーチをするわけなんですね。朝鮮学校に対する補償が次々、いろいろなところで打ち切られている。子供たちがそういう人たちが何か核戦争をしようとしているとか全くなく勉強したい普通の子供たちがなぜ犠牲になってその権利を奪われるのか裁判で朝鮮学校が訴えて敗訴するということも続いています。なので先ほど亀井さんがいったように北朝鮮の持っている危険性が大変なもので私たちも注意深く監視をしていくとかそういうことしなきゃいけないのは確かですけどただ解決は亀井さんも言ったけど話し合い、そこは絶対に譲れないそこから派生して、それを利用して政治家がそういうことをするそういう人たちがヘイトスピーチをする動きに対しては断固反対していくっていうそういう姿勢を忘れないようにしていきたいと思っています」

今日のテーマはヘイトスピーチだっけ、というのは無粋というもの。なお北朝鮮のミサイル発射については、在日韓国人側からも抗議があり、民団も抗議デモを開催した。これもヘイトスピーチ?

「よね」「ね」終助詞のオンパレード

結局、話の核心部分が見えてこなかった。結局、「日本が悪い」「政治が悪い」という居酒屋談義の域を出ない。都合の悪い報道やニュースに対しては「扇動」と評するのも定番だ。主張の骨子としては、北朝鮮への危険視に警鐘を鳴らすというわけだが、再三にわたりミサイル発射を繰り返していることに対しては無批判だ。で、その割に「北朝鮮の持っている危険性が大変なもので私たちも注意深く監視をしていくとかそういうことしなきゃいけないのは確か」と一応、危険であることは認識しているようだ。

興味深いのは「亀井さんも言った~」を複数回使っていることだ。このところ香山氏は専門外の分野にも有識者として関与することがある。ところが知見もなければ、独自のエピソードがあるわけでもなし。だからこの場合、「亀井が言った」という具合に既存の言説にすがる他ない。彼女が行うシンポジウムでありがちなことだ。そのせいか攻撃的で、勇ましい文言とは裏腹にやたら「よね」「ですね」「ね」と念押し、確認の終助詞が目立つ。本当に「ね」だらけなのだ。

それはまるで聴衆に確認するように。「アタシ、間違ってないよね」「同意してくれるよね」こう言いたげだ。攻めているつもりが実は手探り状態で、終始自分を守っている。いわば講演会における香山式カテナチオとでも評すべきだろうか。加えて言葉の節々の知識のなさが垣間見える。

「朝鮮学校に対する補償が次々、いろいろなところで打ち切られている」

この場合、「補償」ではなく「補助」だ。朝鮮学校を支援する学者、活動家ならばまずこういう表現はしない。

そして繰り返すのは「話し合い」。この場合の「話し合い」は一種のバズワードにすぎない。では香山氏、そして左派の文化人、人権活動家たちはそれほど“話し合い”ができるものだろうか。過去、彼女も参加した『全国部落調査』のシンポジウムで弊社代表が活動家らに強制排除されたというのはご存知の通り。目の前に論敵が来ているならばなぜ“話し合い”ができなかったのだろう。また香山氏が路上で保守団体のデモに向かって、指を立て“ファックユー”のポーズをとったのはあまりに有名な話である。もし北朝鮮と対話が重要だ、というならば仮に自分に火の粉が降りかかったとしても、彼らデモ隊と話し合いをすべきではないか。ところがそうした話は聞かない。

そればかりか、たかがツイッターなどSNSでは、不快なものはすべてブロック。問題は普段、こういう態度にも関わらずより巨大で、核兵器を有する北朝鮮と“話し合い”と言われてもまるでリアリティがないのだ。この点に全く無自覚である。もし若者が自身の言葉を受け入れないとすれば、その“胡散臭さ”を感じ取ってのことだろう。

そして繰り返すは専門の心理学用語を使った他者へのレッテル貼り。要は自身と主義主張を異なる者をまるで「病人」のように扱っている。要するに「アタシと仲間以外はみな病んでいる」というもので、ここに深い論考は存在しない。なんとでも言える話だ。むしろ医学用語、知識の政治的利用というもので、フェアではない。

もっとも彼女もこうした役割を期待されているのであって、主催者側に求められている面もあるのだろう。このポジションに座している以上、今後もお座敷に呼ばれては批判対象を「心が病んでいる」と断じてシンパたちと高笑いする。要は市民団体の御用医というわけだ。ただ彼女にも考えてほしいことがある。門外漢の文化人が声を挙げれば挙げるほど、かえって反発や憎悪を増幅させるということだ。香山氏は聴衆の前で喝采を浴び陶酔感に浸っていることだろう。しかしその憎しみはかえって北朝鮮、在日コリアンに向かってしまうものだ。語れば語るほど、かえって対立を煽るという構図がここにある。「反北朝鮮を煽るな」と言いつつ、実は本当に煽っているのは香山話法であることをそろそろ自覚してはどうか。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

wp-puzzle.com logo

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)