昭和と同和がある光景 岐阜県山県市

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By Jun mishina

「やまがた」といえばまず山形県山形市をイメージするだろう。対して岐阜県西部の山県やまがた市と思い浮かぶのは少数派。岐阜県民ぐらいか。いや岐阜県民ですら「やまがた」とくれば山形派が少なからずいることだろう。特に観光地も名産もない地味で知名度は低い山県市。だが意外や市内にはマニア必見のレアスポットが点在しており、今後ブレイクする可能性を秘めている!

山県市は2003年に旧山県郡高富町、伊自良村、美山町が合併して発足したので、市政としては浅い。だが斎藤道三と土岐氏が争った舞台の大桑城、高富陣屋跡などの史跡もあり歴史は古い。また戦国武将、明智光秀ゆかりの地としても密かに注目されているのだ。中洞白山神社には光秀のものとされるうぶ湯の井戸跡と墓もある。2020年には光秀が主人公のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』も決定したので、県内外から歴史マニアたちが訪れている。

光秀は武将としても織田家の官僚としての有能だった。このため中洞白山神社は学問、出世にご利益があるそうだ。ただ墓というのは腑に落ちない。というのも光秀は1582年、山崎の合戦で羽柴(豊臣)秀吉に敗北し、逃げのびる途中で落武者狩りにあったというのが通説。ここに墓があるのはなぜか? 神社の説明書きを読むとこんな話だった。

山崎の合戦で打ち取られた光秀の正体は影武者の荒木山城守行信。これに恩義を感じた光秀は子孫に伝えようと荒木の「荒」と深い感謝の「深」で荒深小五郎と名乗り出したと。その後、関ヶ原の戦いで東軍につこうとしたが途中川で溺れこの地に埋葬された。

なんとも出来すぎた話で創作感も漂う。なにしろ光秀の出生地とされる場所は県内に「だらけ」だ。有名なのが可児市瀬田の明智城、恵那市明智町の明知城などで、それぞれが光秀のルーツとアピールしている。可児市も恵那市も「あけち」の地名を有しており、根拠としてはこの両市の方が強そうなのだが。

まあともかくこのうぶ湯伝説目当てに訪れる人は少なくない。実は山県市には他に2つの白山神社がある。同市東深瀬の白山神社も訪問したところちょうど付近が工事中だったが、「あんたも光秀の墓に来たの? 間違えてここの白山神社に来る人が多いんだよ」と言っていた。

昭和の経営者の気概、瀬見峡温泉

梶原拓前県知事も協力していた。

場所は変わり今度はバブル遺物、廃墟マニア向けスポット。418号沿いにある瀬見峡温泉と美山平和観音だ。バブル経済時代、旧美山町に建設された行楽施設でゴルフ場、温泉、庭園を有していた。特に庭園には巨大な観音があることで一種のランドマークになっていた。ところがそれも2000年初頭まで。現在は温泉や庭園は事実上、廃墟と化している。だから現在はバブル遺物探訪でこの地にマニアがやってくる。

庭園を散策すると植木の整備作業している男性がいた。なんと瀬見峡温泉を作った実業家の親族だった。同氏によると温泉や庭園は美山生コンという会社の創業者、武藤久次氏(故人)が築いたものだった。

「当時、創業者は地域経済を活性化しようとしたんです。ところがこの通り山なりの地域だから、企業を誘致しようにも工業団地を作ることができないでしょ。ならば温泉がある行楽地にしたらどうかという話になりゴルフ場やモノレールも作ったのです。建設当時はバブルで開発ブームだったからね」

山を上がっていくモノレール。運行していた頃は売店まであった。

観音部分は韓国で製作したという。

観音の台座に回廊が。ちょっと不気味だった。

荒れ放題かと思いきや、全体的に園内は手入れが行き届いていた。

道沿いから突如、観音の姿が。

ゴルフ場の風呂は天然温泉だから評判でモノレールも面白いから創業当時は賑わったという。また仏像は韓国に注文して取り寄せた。灯籠なども朝鮮式のものだ。だから韓国関係者もこの行楽地に関心を寄せて碑石を寄贈したり、植樹も行った。韓国にちなむものが随所に見られるのだ。

「勢いがある頃はいいけど、こうなっては残された者も大変だよ」

男性は苦笑する。なにしろ庭園は広大だ。ところが雑草が生い茂るというわけでもない。とても大切に管理されていることはよくわかる。ただモノレールと駅舎までは手が回らず放置したままだ。確かに残されたものからすれば厄介な遺産かもしれない。しかし昭和の経営者はとにかくこういう無茶をやったもの。発想のスケールが大きいというのか。他地域でもバブル遺産が残りその処分に四苦八苦しているが、痛ましくもある反面このような大胆な取り組みができる時代は懐かしくもあり羨ましくもある。

この流れで次に向かったのが「岐阜レトロミュージアム」(椎倉323)だ。ここは昭和のレトロゲーム、喫茶店のゲーム、または懐かしい自動販売機が現役で動いている。この日は開店と思っていたが休業日。これはまたいつか紹介しよう。

隣保館は普通の公民館

特に同和を思わすものがない。

同和絡みだとこのポスターぐらいか。

さて弊誌が単なる昭和、バブル巡りで終わるわけにもいかない。美里会館という隣保館がある山県市高富の旧美里付近も探訪してみよう。ところがこの辺り全く同和を思わすものがなく老朽化した家屋はあるものの住宅開発も進められている。美里会館の職員にも聞いたが人権学習なども行っていない。また解放運動の名残りを残す施設なら運動体の発行した書物や機関誌があるものだがそのような資料室もなかった。啓発系のポスターがせいぜいだろうか。

これで760円。ご飯と味噌汁がおかわりできる。食後はアイスクリームかアイスコーヒーがつく。

なかなかこの地域で同和的要素を見出だすことはできない。しかしあえて地域的な特徴があるとすれば精肉業者や肉料理店が多いこと。そしてデカ盛りの店で食レポのブロガーやユーチューバーらの間で有名なのだ。美里会館近くにはお値打ちの焼き肉で知られる武蔵、肉料理の松月、そして道を隔ててデカ盛りで有名なみのやがある。今回は松月のランチ(760円)にしてみた。同店のランチの特徴はとんかつ、しょうが焼き、唐揚げなど3つから2つを組み合わせたものが出る。それぞれ普通の店では一人前の分量だ。またライスと味噌汁はおかわり可。これに食後はアイスコーヒーかアイスクリームがつく。お値打ちなのでぜひ試してもらいたい。

さてとりわけ目立ったものはない山県市だが実は隠れスポットが点在していることが分かってもらえぢろうか。電車の駅はないためアクセスは悪いがぜひともオススメしたい町なのだ。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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昭和と同和がある光景 岐阜県山県市」への3件のフィードバック

  1. 亀村さん

    読み終わってなんだかほのぼのする記事でした。取材を終えられて、三品さんもそんなお気持ちだったのではないでしょうか。喫茶店のゲームが現役で動くところ、またこのレポートで拝見したいです!

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  2. 地元民

    生まれた時から高富に住んでいると珍しくもない、みのやと松月ですが外からみると有名なんですね。
    同和って意識は、希薄ですが向こう三軒両隣の感覚がまだ残ってるから外から来た人が溶け込みにくいとはよく聞きますね。

    返信
  3. 三温糖

    過去には岐阜市から鉄道もあったのが、廃止されたようです。廃止の理由は、赤字だからというのとはなく、輸送力の増強が追い付かずバス転換だったとか。
    岐阜市あるいは愛知県方面へ通勤通学する人が多く、岐阜駅⇔山県市高富はバス運行本数が多いです。

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