奈良市環境部は永遠に“清美”されないのか!?(中編)

三品純 By 三品純

不祥事が相次ぐ奈良市環境部の実態に迫るレポートの中編。今回は、問題となったファミリープール(大和郡山市)売店業務を請け負った森嶋企画、そして奈良市環境部関係者への直撃取材を中心にお伝えする。結論から言えばみな一様に「取材拒否」だった。残念ながら「分からないことが分かった」という結末なのだが、現地の反応、雰囲気を感じ取ってもらえれば幸いだ。

黒鉄くろがねの城、森嶋組がある河合町

森嶋企画の所在地である北葛城郡河合町、同町にも同和地区があり、またあるトラブルで有名な町なのだ。森嶋企画取材の前に町の概要を紹介しておこう。ここは解放運動が盛んな奈良県。もちろん河合町もかつては、同和事業、同和行政が盛んだった。1970、80年代の町報を見てもその様子が見て取れる。町報『みんなの河合町』(昭和51年8月)の一面には「同和対策事業の推進について ‐差別をなくす町民集会開く‐」として集会の模様が掲載されている。あるいは「狭山事件ハンスト」(同年11月)という記事では、同盟員による河合町町役場前のハンスト(ハンガーストライキ)が報じられていた。町報というよりももはや機関紙の類である。現在、河合町役場によるとすでに同和事業は行っていないという説明だ。役場前に設置されている「育てよう一人一人の人権意識 地域社会に人権の輪を広げよう 河合町人権・同和問題啓発活動推進本部」という看板に“らしさ”が残っていた。

さて河合町と言うと同和よりも「森嶋組」という任侠団体の事務所が有名かもしれない。全体が黒く塗装され、鉄の扉に守られた「森嶋組」は異様な雰囲気を醸し出している。まさに黒鉄の城だ。鉄製の重厚なドアをゴンゴンとノックしてみるが反応はなかった(森嶋組レポートについては後日また)。ちなみに近隣住民によると例の森嶋氏と森嶋組は、縁戚関係ではないということだった。そもそも河合町は「森嶋」姓がとても目立つ。

そして森嶋組近くには、町営住宅がある。かつて同和事業で建設されたものだ。町営住宅には、長年、暴力団関係者が居住しており、町との間で明け渡し訴訟も起きたほど。彼らは銀行口座を作れない者も多く、町の職員が訪問して徴収していた時期もあった。現在は一般の町営住宅になっているが、住民によると解放新聞奈良県版がポストに投函されるという。見せてもらうと「全戸配布号」となっていた。

奈良県の同和事情については以前も触れたが、1990年代に解放同盟内で川口正志(現・部落解放同盟奈良県連合会委員長)の通称“川口県連”と山下力(現・NPOなら人権情報センター副理事長)の“山下県連”に分裂した。この件については、同和マニアならばすでにご存じだろう。

例えば奈良市内なら川口県連が強く、天理市、磯城郡は山下派が強いといった地域差がある。河合町については事前に山下派が強い、という情報を得ていたが、町関係者によると両派とも存在していたという。一応、解放同盟の支部はあるということで住所を辿ってみると「河合町心の交流センター」にたどり着いた。

みんなで守ろう平和と人権
差別をなくすのはあなたです

差別をなくす学習から
差別をなくす行動へ

この標語通り、典型的な隣保館である。訪問した時は、入口付近の公衆電話で田舎仕立てのエグザイル風の男が何やら電話ごしに怒鳴っていた。訳アリ感満々だ。同館館長によるとかつてはここに解放同盟の支部の事務所があったそうだが、すでに退去しているということだ。入口付近に「97年度解放学級4年生」という絵が飾られていた。90年代末まで同和教育が盛んだったことが分かる。

そしてセンターより徒歩5分ほどの場所に森嶋企画がある。事務所というよりも自宅というべきだろう。家屋の前で壮年、妙齢の男女が作業をしていた。残念ながら森嶋氏の素顔を見たことはない。ただMBSの映像では、一部モザイクがかかったとは言え、彼の姿が映されていた。そのフォルムと住宅前のこの男性はぴったりだ。

「森嶋さんですか。ファミリープールのことでお話を聞きたいのですが」

こう切り出すと男性は物陰に下がってしまう。変わって女性が応対した。名刺を差し出そうとするやこう連呼する。

「取材? 任意ですか、任意ですか、任意ですか?」

任意と言われても…こう当惑した。何も刑事の事情聴取ではない。もちろん取材に応じるか否かは「任意」ではあるのだが…。逆に「強制です」と答えたらどうするのだろう。この手の応答で様々なリアクションに出会ってきたが「任意ですか」と言われたのは初めて。斬新な応対だ。

「警察呼びますよ」

「それは構いませんが、ぜひプールのことを」

「市に聞いてください」

別の人物が入ってきた。

「どこから来たん?」

「川崎市の示現舎と申します」

「なにしにきたん?」

「森嶋さんの病気休暇中のプールのお仕事についてお聞きしたいのです」

しかしあとは全くの無言。取材に応じる気配はなかった。大和の寒風に揺られ一同の冷めた視線が降り注ぐ。そんな雰囲気に包まれてとりあえずこの場を後にした。何も彼だけに環境部の不祥事を押し付けるつもりはない。おそらくだが従来から似たようなケースがあったと思う。おそらく彼もそういう裏慣例のようなものを踏襲したかもしれない。河合町の取材の最中こんなことがあった。地元男性はこういった。

「奈良市職員のアルバイト? そんなん普通やないかな。役所なんてよくある話と違うの。アンタ川崎市なの? 川崎市もそうやないか?」

川崎市がどうか分からない。ただこの男性はこうも言った。「大和川沿いの〇〇は奈良市に勤務しながら自営業をやっている。聞いてきてみ」。実際にこの〇〇に行き確認してみたが“ガセネタ”で平謝りをした。ただこの男性の言ったことは単なるイメージや誤解なのか、奈良市では普通のこと、なのか分からない。しかしこの男性に限らず、住民たちにファミリープールの件を聞いてもとても冷めた反応を示したものだ。住民の間では少なからず奈良市への不信感というのか一種の諦観のようなものを感じた。

環境部関連人物のそれぞれの反応

かなり無駄足だったが、一体、奈良市環境部にどんな実態があるのかまだ十分な証言を得ていない。ならばいっそあの人にすがってみるか。そう中川昌史氏ならば何か吐露してくれるかもしれない。この足で奈良市古市の中川氏の元に行ってみた。

建設会社が多く立ち並ぶ奈良市古市。自宅前には親族と思しき女性がいる。そういえばあのポルシェはどうなったのだろう。今では別の「P」車が止まっている。今は別のP中川だ。そして中川氏に会いたいとの旨を告げる。女性は聞いてくるから、と家に入っていった。待つこと数分。

「今、入院しているのでいません」

「え?」

最初の反応だと間違いなく自宅にはいるような気配だった。しかしこの対応というのは要するに話をしたくないということだろう。残念ながらここで粘れるほど余裕もない。今さら中川氏を批判する気は毛頭ない。ただ運動体へも、また役所にも不満があるに違いない。ならばぜひその思いを聞いてみたかったのだが…。病気を口実に欠勤を続けた彼が今、「入院」を口実に取材を拒否している。らしいと言えばらしい。

そしてもう一人、奈良市環境部にとって重要な人物を挙げておきたい。環境部収集課の主任で自治労奈良市従業員労働組合(市従労組)委員長の大橋浩治氏だ。市従労組も解放運動に関与することがある。

関西の全国連は、10月31日、自治労奈良市従業員労働組合が主催した「狭山事件の再審を考える労働者集会」に全力で参加しました。労働組合、市民団体など賛同団体、個人、285人が参加しました。主催者あいさつで、自治労奈良市従労組の大橋浩治委員長は、「石川さんの再審にかける思いを受けとめ、狭山再審闘争を自らのたたかいとしよう。狭山の勝 利なくして、労働者の勝利はない。部落差別にもとづくデッチあげを許さない。労働者こそ、反戦・平和、人権を守るたたかいの主人公となろう。色々なしがらみ、立場をこえ、狭山闘争の大きな運動をつくりだそう」と訴えました。(全国連HP2010年12月16日)

この通り、環境部には、部落解放同盟全国連合会、通称「全国連」の活動にも参加する職員もいるのだ。この全国連。弊社の読者の方ならばご存知かもしれない。『全国部落調査』の発刊でたびたび抗議文を送付してくる団体だ。そして奈良市役所内の自治労奈良市従労組の事務所を訪ねてみる。「午前中県本部書記会議のため出張します」こう貼り紙がしてあり、大橋委員長は不在だった。そしてこういう注意書きもある。

関西合同労働組合の関係者の方は、事務所への入室はお断りします。

なんでも2017年10月13日に奈良市従は、関西合同労働組合、関西合同労働組合奈良支部らと絶縁したそうだ。関西合同労働組合の機関紙(9月27日)の「奈良市清掃非正規労働者の雇い止め=解雇を許さない」という項目の中に「闘わない現業労組の幹部を打倒して」などの記述があった。これに奈良市従が激怒したというわけだ。とても興味深い出来事だと思った。かつて全国連は、中核派と関係が深かったが、現在はほとんどの支部で絶縁状態にある。一方、関西合同労働組合は中核派系の団体だ。奈良市従と関西合同労働組合の対立もこうした背景を受けたものに違いない。おそらく記事についてもきっかけにすぎなかったのだろう。この辺りの事情を伺おうと後日、大橋氏に連絡を取ると、市従の職員からこう返答があった。

「昨年の件(森嶋の病気休暇中のバイト問題)についてはコメントしない、できない、ということです」

現業労働者の立場を代弁する立場にあるはずだから、せめて見解でも欲しかったところだ。いずれにしても関係者から何ら証言が得られないのは残念だった。
(次回に続く)

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