真相解明! 部落解放同盟滋賀県連合会名簿はなぜ流出したか(同和と在日2011/10)

By 鳥取ループ

鳥取ループ・三品純(取材・文) 月刊同和と在日2011年10月号

全ては2009年12月14日に鳥取ループに書きこまれた、次の3行のコメントに端を発する。

あるところにはあるようですよ。
地名○○
//www1.axfc.net/uploader/Sc/so/63907.txt

書きこまれたアドレスにアクセスすると、“部落解放同盟滋賀県連合会末広支部会員名簿.txt”というファイルが置かれており、その中身はタイトル通り部落解放同盟滋賀県連合会末広支部の141人分の名簿だった。ファイルが置かれていたサイトは、掲示板などでデータをやりとりするためにいわゆる「アップローダー」で、数日経つとファイルは消えてしまう。

その後、不定期的に同様の方法で名簿がアップロードされ、先の末広支部の他、住吉すみよし虎姫とらひめ川尻かわじり橋岡はしおか長寺おさでら甲西こうせい十里じゅうり長塚ながつか山川原やまがわら川久保かわくぼ、長浜の合計12支部、913人分の名簿が順にインターネットに流出した。「部落解放同盟滋賀県連合会会員名簿流出問題まとめブログ」というブログも作られ、それによれば県連55支部の支部名の一覧が名簿を流出させたと思われる人物からメールで送られてきたという。この経過は拙著「部落ってどこ? 部落民ってだれ?」に既に書いたとおりである。

なぜ県連支部の名簿が流出したのか、長らくはっきりしなかったのだが、我々はここにきてようやくその全貌ぜんぼうを突き止めるに至った。結論から言えば、おおよそ「犯行声明」の通りである。具体的には、2010年1月27日に愛荘町あいしょうちょう3地区(長塚、山川原、川久保)の支部名簿がアップロードされたときに、一緒に添付されていた以下のメッセージに凝縮されている(原文ママ)。

ずさんな名簿管理で部落差別を拡大させ、自らの責任を自らで問えない者が、部落差別解決に向けた取り組みを行おうという行為がすでにエセ同和行為である。

部落解放同盟滋賀県連合会は自分達でない他者の行いを、数々の糾弾という行為でねじ伏せ自分達に有利に物事を動かすことが部落差別を生んでいる事に気が付くべきである。

貴方たちは勝ち取ってきたのではなく。奪ってきたのである。

同様に、東近江市に対しても部落解放同盟滋賀県連合会は糾弾という暴力的な行為を愛荘町を従わせ行った。そして部落解放同盟滋賀県連合会の自己利益のみを追求したばかりに東近江市民や愛荘町民に対し、また部落解放同盟滋賀県連合会に対し部落差別という溝を作った。

滋賀県に部落差別が存在するから部落解放同盟滋賀県連合会を存在させる必要はない。
もし部落差別解放のために部落解放同盟滋賀県連合会が存在することが必然ならば、ずさんな名簿管理により55支部の会員名簿を無線LANで公共の電波ごとく流し公開していた部落解放同盟滋賀県連合会は部落差別の元凶であり部落差別を拡大させている原因だ。

「部落解放同盟滋賀県連合会による愛荘町内の支部員名簿流出事件真相報告集会」を開くことは東近江市・愛荘町にとってラストチャンスかもしれない。

もし、現在の部落解放同盟滋賀県連合会が部落解放に向けた行為を行っているというのであれば、私が行っている行為も部落解放に向けた行為であり、それは部落解放同盟滋賀県連合会の名簿管理体制について糾弾することである。

パスワード無しの無線LANで
情報が垂れ流しにされていた

「犯行声明」の中にある「無線LANで公共の電波ごとく流し公開していた」という部分に注目してほしい。県連が問題の名簿を無線LANによりアクセスできる状態にしていたことは事実である。その前兆が、2009年4月の滋賀県人権センターの職員名簿24人分が流出したとされる事件だ。2009年8月1日の毎日新聞は次のとおり報じている。

個人情報:職員名簿ネットに流出 県人権センター、24人分 /滋賀

財団法人「県人権センター」(大津市におの浜)の職員名簿が4月にインターネット掲示板「2ちゃんねる」上に流出していたことが31日、分かった。本来の名簿にはない職員の個人情報が書き加えられていることから、同センターは県警生活環境課に相談するなど原因を調査。同課はリンク先のサイト管理者に削除を要請し、閲覧できないようにした。
同センターによると、流出したのは3月末ごろに作られた08年度の職員24人の名前や住所、役職の名簿。同掲示板では、部落解放同盟の活動に批判的なスレッド(投稿の集まり)の中にリンク先のアドレスが書き込まれれていた。

住所は黒塗りにされていたが、名前や肩書は実名のまま。備考欄が設けられ、
部落解放同盟の幹部を務める一部職員の具体的な肩書が記されていた。

4月7日に掲示板を見た職員が発見。同センターは名簿作成直後の4月2日昼から数時間、共有サーバーに保存した流出分を含む各種データが消えるトラブルが起きたが、調査の結果、ウイルス感染の可能性は低く、職員のファイル交換ソフトの利用もなかった。

同課もセンターへのアクセス記録を解析するなどして、流出の経緯を調べている。

この点について当時の経緯を知る複数の関係者に取材したところ、経緯はおおよそ記事の通りである。しかし、決定的に欠落している部分がある。それは、名簿が置かれた共有サーバーは無線LANによりアクセスできる状態になっていたことだ。県連のある幹部は「その可能性はある」と、無線LANによる侵入が可能な状態であったことを認めた。このとき無線LANには一応パスワードがかけられていたようで、仮に無線LANのパスワードを破って、さらに共有サーバーのデータを取得して元のサーバー上から削除したのであれば、これは完全な不正アクセスだ。ただ、無線LANのパスワードを解除する方法は、当時から雑誌やインターネットで紹介されており、ツールも比較的簡単に入手できることから、高度な技術がなくてもやろうと思えばできないことではない。当時は人権センターと県連が入居している「解放県民センター光荘ひかりそう」の会議室を度々共産党が借りていたことから、“県連と対立する共産党の仕業だ”といった声もささやかれた。

無線LANを使っていたということは、外部の人間が不正アクセス可能だったということだけではなく、また別の意味合いもある。無線LANの電波は状況によっては100メートルくらい届くので、光荘2階にある県連事務所から1階の人権センターの無線LANに接続できたはずだ。しかも、人権センターの職員に県連のメンバーが含まれていることは周知の事実である。取材の過程で関係者から「人権センターと県連は別組織なので、人権センターから漏れることはあり得ない」という証言があったのだが、この説明は崩れる。実質的には人権センターのデータが県連と共有されていたのである。後に述べるように、県連事務所もまた無線LANを使用していた。設備の面でも、人的な面でも、双方向でデータが共有された状態になっていたのだ。

この人権センターの無線LANとは別に、実は県連事務所も無線LANを使っていた。この無線LANについて、関係者から重要な証言を得た。

光荘にはもう1つの組織、滋賀部落解放企業連合会(企連)がある。県連と企連の関係は、人権センターと県連の関係よりも密接である。関係者によれば、県連事務所が無線LANを使用した目的は、県連と企連がデータを共有するためだったという。そして、この無線LANにはパスワードがかけられていなかったという。つまり、ラジオの放送局のようなもので、電波が届く範囲であれば、誰でもアクセスできる状態だったのだ。「犯行声明」にある無線LANというのは、このことだろう。

県連のある幹部も、無線LANが流出源である可能性を認め、パスワードをかけていなかったことについては調査中としながらも、否定しなかった。また、名簿流出の直接の原因である可能性は低いが、職員がファイル交換ソフトを使っていたり、県連の備品のノートパソコンを私物化して自宅に持ち帰っていた幹部がいたりしたという証言もある。

つまり、人権センターの情報管理には問題があり、県連に関してははっきり言ってお粗末だった。そして、両者が情報を共有していたため、人権センターの情報管理さえも無意味化していたと言えるだろう。

前代未聞の「センシティブ情報」の流出

県連の名簿流出はその情報の性質という点では前代未聞である。世間的には最も流出させてはいけない、いわゆる「センシティブ情報」とされているものの代表格であろう。県連も2010年10月11日発行の解放新聞滋賀版で「被差別部落名である支部名・氏名・住所・生年月日・郵便番号・携帯番号を一緒に流出させており、名簿に記入されている人が被差別部落民であることを不特定多数の人々に知らせることであり「部落人名総鑑」とも言うべき悪質な差別事件である」としている。解放同盟は以前から「どこが部落で誰が部落民か調べることは差別、しかし解放運動のためなら許される」と主張してきた。しかし、ある意味「部落民の名簿」が外部に流出してしまっては、そのことをどのように自己批判しても、あるいは正当化したとしても運動自体のメンツが潰れることは避けられない。県連の場合は、正当化して今後一切他者を非難できなくなるよりは、自己批判する方を選んだのであろう。

名簿が流出してしまったある支部の関係者によれば県連の幹部が何度も謝罪と経過報告に訪れ、それこそ平謝りであったという。誰が流出させたのかということについては、「誰がということではなしに、とにかくそのような情報が流れてしまったことは県連の管理不行き届きだということで謝っていました」ということだ。「まとめブログ」を通じて支部名の一覧もネットで公開されたことから、名簿流出が判明した支部以外にも同様の説明と謝罪があったという。

県連からは「名簿は事務所のサーバーに、金庫のように厳重に管理していた」と説明されたという。支部の関係者に無線LANのことを聞いてみると「無線というようなことは聞いていません」と語った。とすると、内部の人間が持ちだした可能性が高いということになってしまうのだが、犯人探しをすることは求めていないという。個人情報が流れてしまったことについてどう思うか問うと、

「住所が出てしまっていますが、私たちは部落に住んでいるということは別に隠してないですし、それを誇りに思えるようにすることが解放運動だと思っていますので」

と、いかにも解放同盟員らしい答えが返ってきた。

確かにその通り、本来は誰が部落民であるかということを隠さないのが解放運動の理念だ。にも関わらず、「身元調査」は差別であると激烈に反応するのは、対外的な「策略」という面が強いだろう。それがいつしか自己目的化してしまい、世間に定着してしまったのだ。世間一般の人々にとって同和はタブーだ。解放同盟員名簿などというものは、タブーの最たるものだろう。しかし、運動体内部の人にしてみれば、顔なじみの同盟員は多くいるし、別に特別なことではない。同盟員名簿と言っても、町内会の名簿と大して変わりはないだろうし、実際にそのような扱いをされていたように見える。

名簿流出についての報告と謝罪は、実際に名簿が流出しなかった支部に対しても行われた。ある同盟員によれば、県連から「取り扱い注意」とされた謝罪と経緯説明の文書がまわってきたという。文書には、無線LANのことも説明されている。

県連の説明よれば、流出した名簿は2007年8月から同年12月までの間に作成され、その後の修正が反映されていないことから、実際に「犯人」の手に渡ったのはその時期であろうということだ。流出した名簿のファイルの作成日付を調べたところ2005年5月5日5時5分というようなものがあったのだが、実際にそのような時刻にファイルが保存されるとは考えられず、おそらくこれは「犯人」によって改ざんされたもので、県連の説明の方が正しいと考えられる。そして、無線LANが使われていたのも2007年の12月までで、その後は有線LANに切り替えられたという。人権センターや県連事務所の有線LANの切り替えについては県人権施策推進課も把握しており、理由は「セキュリティのため」というから、人権センターの職員名簿流出の発覚から2年以上も前に県連はセキュリティに問題がある状態だったことを把握していたことになる。

流出した名簿のもとになったのは、企連が税金の管理用にもともと持っていた電子データと、紙ベースで保管されていた各支部の同盟員名簿であり、それが2006年頃から電子化されたという。企連名簿はそれなりにきっちりしたものであったが、各支部の同盟員名簿はもともと不正確なものである。例えばある支部の関係者はこう語る。

「うちの支部の名簿なんか昭和50年代からそのままやで。だから死んどる人もおる」

流出した末広支部の名簿を見た地元住民は、名簿の内容は新しくはないが、かと言ってそれほど古いわけでもないと言ったが、おそらく新たな電子化により企連の比較的新しい名簿と、紙ベースの古い名簿がまざった状態になったためだろう。それは、名簿を電子化した目的が、あまり“精度”を要しないような用途であったことを示唆している。

実際のところ、関係者によれば問題の名簿が電子化された目的は、県連が支部会員に対してハガキで県連60周年記念式典の案内をするためだったという。企業で言えばダイレクトメールによる営業活動のようなものだ。その後も名簿は利用され続け、例えば名簿が松岡まつおかとおる元参議院議員の選挙運動に流用されたことがあり、その経路で流出したのではないかと噂する人もいた。

名簿流出に関わった人物が真相を告白!

解放同盟員からは名簿流出の原因について、様々な説が聞かれた。前述の共産党説、松岡徹の選挙運動説もそれだ。しかし、名簿の内容を暴露するのは共産党のやり口ではないし、参議院議員選挙は2007年の7月なので名簿の流出時期よりも前なのでおそらくこれも違うだろう。

最も有力なのは、内部犯行説だ。昨年、県連の建部たてべ五郎ごろう委員長が解任され、藤野ふじの政信まさのぶ氏が委員長となったが、解放同盟関係者によれば、藤野氏の目下の課題は、組織内の対立を収束させることだという。どういうことかというと、県連では山口やまぐち敏樹としき副委員長を中心とするグループと丸本まるもと千悟せんご書記次長を中心とするグループの間で言わば覇権争いがあるのだ。「丸本派」である建部委員長を失脚させて、さらには丸本書記次長も失脚させようと「山口派」の事務員が名簿を持ちだして事件を起こしたという筋書きだ。その一方で、「丸本派」の事務員が金のために名簿を名簿業者に売ったという噂も流れている。

そして、我々は取材をする中で、ついに「自分は名簿の流出に関係した」という人物に接触することに成功した。氏の希望により名前は明かせないので仮に猪口いのぐち静香しずか氏としておこう。猪口氏は

「詳しいことは明かせないですが、名簿の流出に関わった人はたくさんいますよ」

という。そして猪口氏は名簿の管理状況について語ってくれたが、それは県連の報告とほぼ一致していた。すると、残る疑問は「なぜ名簿を流出させたのか」ということだ。氏によれば、前述の「犯行声明」に書かれた通りだという。ということは、「「東近江市民による電話での愛荘町役場への同和地区問い合わせ差別事件」がなければ名簿流出はなかったのか」と我々が問うと、「そう」と答えた。だとすれば、県連の運動方針に不満があり、それを正そうというある種の義侠心ききょうしんから人々が起こした行動なのだろう。確かに、同和地区はどこなのかということよりも強力な、同和関係者は誰なのかという情報を県連が持っており、それをずさんに管理していたという事実を示すことはこれ以上ない強烈な“あてつけ”であるし、愛荘町問題を「差別事件」としたことは同和地区内でも賛否両論があり、県連の方針に反発する人々が少なからずいたことは我々も取材の中で把握していることである。

一方で、「犯行声明」にはこんなことも書かれていた。

部落解放同盟滋賀県連合会委員長建部五郎へ告ぐ

ずさんな名簿管理体制により55支部の会員名簿が外部へ流出し現在8支部(594名)の会員名簿がインターネット上に流出している事実をマスコミ各社に公表し関係各団体ならびに解放同盟滋賀県連会員全員に対し部落解放同盟滋賀県連合会の公式な謝罪文を送付するとともに早期に自らの責任と自らの意思をもって委員長職を辞職することを要求する。
本件は一般人に開放された状態であった無線ネットワーク内の共有フォルダに会員名簿を誰もが観覧できる状態で保存していた部落解放同盟滋賀県連合会のずさんな情報管理体制と社会的責任を委員長建部五郎に追求するものであり決して脅しではない。

建部前委員長の辞職を要求したのはなぜなのか。それを猪口氏に問うと、それは「県連内部での対立を利用した」というのである。

猪口氏は驚くほど県連の内情に詳しい。我々は取材の中で、ある同盟員から幹部がいる支部を避けるように名簿が流出していることを指摘されたが、氏によれば、確かにその通りで、それにはちゃんと意味があるのだという。すなわち、「オレも被害者や」と幹部に言わせないためだ。逆に、名簿が流出したのは建部前委員長をよく思っていなかった支部だという。こうしておけば、建部前委員長と対立する勢力が必ず委員長を辞職させるように動き出すと読んでいた。そして、実際に「犯人」の思惑通り名簿流出に加えて金銭問題を追求されて建部委員長は失脚した。現在県連内部では多額の使途不明金が出ていることが問題になっているが、そのことについて内部告発がされたのも、全て計画通りであったという。

それでは、「犯人」の最終的な目的は何なのか。「犯行声明」には「部落解放同盟滋賀県連合会を存在させる必要はない」「部落解放同盟滋賀県連合会は部落差別の元凶であり部落差別を拡大させている原因だ」というフレーズがあるが、猪口氏によれば、これに関しては「策略」として書いたものではないという。氏はこう言う。

「例えば人権センターにも行政にも、思い描いていた理想と現実とのギャップ(運動団体内での対立など)に失望している人が少なからずいます。同盟員名簿をばらまこうというアイデアを出したのも、そういう人ですよ」

しくもこの原稿を書いている途中(2011年9月)にも、猪口氏の証言を裏付ける事態が起こっている。「2ちゃんねる」で、最近行われている人権センターの職員の採用試験について、出来レースであるという告発めいたことが書かれており、あらかじめ採用が決められているとされる「丸本派」の受験者の実名を出して「名簿屋」とののしっている。これについて人権センターに電話取材したところ、当然センター側は不正については否定した。しかし、驚くべきことは次の日には「火曜日に鳥取ループから人権センターに採用試験について 電話がかかってきて対応した総務の坊さまが騒いでましたよ。」と2ちゃんねるに書き込みがされたことだ。中の情報が筒抜けなのである。このようなことは今になって始まったことではなく、ある県民が人権センターに電話で「人権相談」をしたところ、自分が相談したことが全く面識のない解放同盟員に知られていたということもあった。

部落解放同盟の名簿が流出した要因は複数あり、それらが重なることで起きたと言える。無線LANをパスワードなしで開放するなどのハード面での情報管理の甘さ、県連内部での対立、人権センターの職員の士気の低さとモラルの崩壊、そして「愛荘町役場への東近江市民による電話での同和地区問い合わせ差別事件」である。このうち大きな要因になったのは、人的な面だ。例え無線LANがダダ漏れになっていなかったとしても、内部の人間が関わっている以上、いずれにしても別の方法で名簿が持ち出され、ばらまかれたことだろう。無線LANの問題や愛荘町の事件は、インターネットに名簿をばらまく「大義名分」とされたに過ぎないと言える。この事件の原因は決して情報管理や“セキュリティ”の問題ではなく、解放運動への反発というもっと根源的なものだ。

世間的には「センシティブ情報」であれど、同盟員名簿はたかが運動団体の「同志の名簿」で、本来なら町内会の名簿程度のものだ。役所や企業の機密情報のように、性悪説に基づいてきっちり管理するには馴染まないだろう。例えば、解放同盟の事務所の中にサーバールームがあり、そこに出入りするにはカードキーが必要で、出入りするにはUSBメモリなどを持っていないかチェックされるというような光景を想像すると、あまりに滑稽こっけいではないか。解放同盟の名簿はあくまで信頼関係により守られるべきものであって、お互いに信用出来ないという前提で情報を管理しなければならない状態になってしまうとすれば、「運動団体」としての存在意義に疑問が持たれるときだろう。

県連は「インターネットによる盗難支部員名簿の差別的流布に関する検証委員会」を設置して、再発防止策を検討しているという。今後の情報の流出を防止する対策があるとしたら、何らかの方法で「同志」としての結束力を高めて「裏切り者」が出ないようにすることだろう。しかし、「部落がどこで部落民が誰か調べることは差別、しかし解放運動のためなら許される」と非常に都合の良い理屈で部落民の存在自体を運動に利用してきたことにも問題はないだろうか。

「名簿流出問題を差別糾弾闘争へ」。県連が各支部に配布した謝罪・説明文書にはこんなことが書かれているという。そして、インターネットに流出した名簿が悪用されないように、インターネットにおける人権侵害に対する法規制、興信所に対する規制強化をすすめていくとしている。一方、県連は現在のところ名簿流出という事態を外部に対しては説明していない。

最初の名簿が流出してから2年が経とうとしているが、幸いにも実害が出ている様子はない。もう少し「地区外」の人々を信頼して「気にしないでおく」というのが実は一番の解決方法ではないだろうか。(鳥・三)