現地レポート”大脱走”受刑者が尾道市向島に潜伏中!?

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By 三品純

松山刑務所大井造船作業場(今治市)の平尾龍磨受刑者が脱走し現在、広島県尾道市向島に潜伏していると見られる。向島内では捜索が続くが、平尾の足取りはいまだ掴めていない。皮肉にも逃亡事件で全国的に注目された向島だが、なぜ格好の潜伏場になったのか。現地を調べてみると興味深い事実が分かった。

多くの島が連なる瀬戸内海は多島海景観と言われる。向島はその諸島の一つ。知名度は村上水軍で知られる隣の因島の方が上だろう。普段はのどかな向島に脱走犯が逃げ込んだというから穏やかではない。現在島内では注意が呼びかけられ、島をつなぐ尾道大橋・向島大橋で大規模な検問を実施。島内では保育園、学校に警官が配置され警戒に当たっている。面積約22km2と決して広くないこの向島でなぜ平尾は潜伏できるのか。一つにはこの島内には「空き家」が多いことが指摘されている。

この事情を島民に聞いてみると向島の産業に関係しているというのだ。向島は造船の町。JFE商事造船加工株式会社、日立造船といった有力企業の造船工場がある。かつては造船所で働く社員、また下請け業者も多かったが、造船業の衰退によって労働者、技術者たちがこの地を離れざるを得なくなったという。こんな話もあった。ある島民が言う。

「向島は空き家が多い? あれも空き家みたいなもんじゃろ」

こう指を差した先には城があった。これは通称、尾道城と言われる個人所有の建物だ。歴史的な建造物ではない。学校法人尾道学園の金尾馨理事長が私費を投じて建設したものだ。しかし老朽化によって倒壊の恐れもあり、取り壊しが検討されている。尾道市まちづくり推進課によると今夏にも市が強度や構造などを調査する予定という。また城自体を市に寄付して、解体することも検討されている。

島内を回ってみると学校施設には必ず警官や刑務官らが配置され警備に当たっている。また警察車両も複数台、島内を周回している。いわばローラー式の捜査が続いている中で、果たして平尾はどこに潜伏しているのだろうか。あるいは島内からすでに脱出しているのか。

島民の不安が募るが、もし平尾が潜伏しているとすれば向島中央部の丘陵地帯ではないか? という見方が多かった。これは向島の地勢的な事情が関わっている。こういうことだ。島の入り口付近、尾道市役所支所が入る「市民センターむかいしま」の一帯はスーパーマーケットや商店、飲食店、新しい家屋が並ぶ。一方、旧来の有力者や富裕層は島中央部の丘陵地一体に居を構えていた。例えば江戸時代の豪農の屋敷で重要文化財にも指定された「吉原家住宅」もこの丘陵部に位置する。この周辺、小高い中央部には旧家と思しき、立派な門構えの家屋が目立つのだ。中には明らかに使われていない蔵や廃屋もある。つまり古くから住まれている分、廃屋も増えるというわけだ。格好の潜伏場所ではないか。またこの一帯は住宅が密集しており、路地も複雑に入り組んでいる。警察車両の巡回だけではなかなか目が行き届かないだろう。だから昼は空き家、廃屋に潜伏し夜は身を忍び町に出る。これもありえることだ。

平尾容疑者が向島の特性を知っていて潜伏したのか分からない。島の大半が丘陵地で独自の景観を誇ってきた向島。その地形が平尾を助けたというのならば皮肉な話である。

向島中心部から尾道市市街を望む。

造船会社。島の重要な産業である。

向島から見た尾道城。

各ポイントに警官が配置。

保護者が付き添い警官も。

向島中学付近をパトロールする。

こうした空き家、廃墟が少なくない。

本州を渡す渡船。これで逃走するのは考えにくいが。

三品純 について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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