【岐阜県養老町】多頭飼い&ゴミ屋敷主からの メッセージ

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By Jun mishina

多頭飼いに死骸…愛犬家たちの阿鼻叫喚が聞こえてきそうだ。岐阜県養老町で2月24日、不衛生な環境で犬を多頭飼いしていた大橋芳美容疑者(68)が動物愛護法違反で逮捕された。家屋周辺からは犬の死骸も見つかっておりまさしく地獄絵図。この人物、調べてみると地元では名うての要注意人物で通っていた。しかも「大橋芳美出版有限会社」を掲げ出版活動にも関わった痕跡があり一層、厄介な隣人の臭いが漂ってくる。現地に行ってみると想像以上の壮絶な事実が待っていた。

大橋容疑者、まさかあの名画の原作者?

養老町、弊社が扱うとなるとコアな読者は三神町・泉町あたりを期待したかもしれない。しかし今回の舞台は養老町若宮。すぐ付近に「養老の滝」、カルト的な人気を持つ「養老ランド」、テーマパーク「養老天命反転地」などの観光地がある。素晴らしい景観を誇る地域だが、その近くで無残な光景を目撃することになった。

ここ数年、犬や猫の多頭飼いまたはゴミ屋敷のニュースは少なくない。特に独居老人と密接に関わっているのが特徴的だ。だからこの大橋容疑者の事件についてもその一環と考えた。検索してみると大橋芳美出版有限会社という出版社を経営していたようだ。国会図書館の蔵書リストを見ると同社の刊行物として『宇宙からのメッセージ(一)』が確認できた。

現在この看板は確認できなかった。

「なんだこれは?」。書名に驚いた。1977年、アメリカで『スター・ウォーズ』がヒットし翌年、日本でも上映され大ブームになったのはご存知の通り。対して東映、東北新社が壮大なスケールのSF映画、スペースオペラを掲げ制作したのが『宇宙からのメッセージ』である。本作は残念ながら爆発的なヒット作ではなく『スター・ウォーズ』のように地上波で何度も再放送されるわけでもない。だがテレビ版『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』にも引き継がれた他、後のSFアクション作品にも影響を与えた。『スター・ウォーズ』に日本の映画人が挑んだ野心作なのだ。大橋容疑者はまさかその原作者? 養老町にそんな偉大な作家がいるのかと思いきや、ただの同名だった。

電波臭が漂う。

個人研究のオカルト本なのは一目瞭然。期待は大きく裏切られたがせっかくなので事件を調査してみることにした。

自称東大に受かっていた? 

岐阜県に詳しくない、イメージがない人でも養老、飛騨高山、関ヶ原、白川村、下呂、このぐらいの地名は分かるかもしれない。養老とくれば昔話の「養老の滝」や肉の町、「焼肉街道」などで人気。あるいは野球好きには名職人が集うバット工場で知られる。役場には改良住宅対策室という部署があるくらいだから同和マニアもよく訪れる。飛騨牛の丸明という大きな看板を見ると養老町に入ったと実感してもらえるはずだ。

事件の現場は養老町若宮の山林にある。細い道をいくといきなり犬が出てきて驚いた。警察の非常線が設置されていたから現場の家屋はすぐに分かる。大橋容疑者逮捕と同時に保健所が犬を60頭ほど保護したと聞いていたが、家屋の奥からは犬の鳴き声が響く。それも結構な頭数が吠えている雰囲気だ。

正直、犬があまり得意ではないから近づいてくると怖い。それでなくても予防接種を受けていないというから危険だ。目視できただけでも4頭の犬がいる。襲ってくる気配はないが、なんとも不思議な懐かしい感覚に包まれた。というのは著者が子供の頃は町に野良犬がごく普通にいて、群れも見たことがある。だがいつしか町から野良犬は消えた。複数の野良犬がノーリードでうろつく光景は久しぶりだ。

家屋の裏は山林が広がっており、犬が身を潜めるには格好の場所である。犬たちは外見上、さほど健康状態が悪くなさそうだが、とにかくゴミが散乱し不潔だ。

付近住民によれば「付き合いがないからよく分からないの。25年ぐらい前はお母さんと暮らしておられてその頃から犬が1頭、2頭、どんどん増えたもんで。その辺りをウロウロするようになったんです。どんな人? 東大に受かったと聞いたことがあるけどよく分からんわ。この辺りは大橋さんばっかりで親類も多いから下の方で聞いた方がええね」と教えてくれた。

ずっと吠えていた。
目が寂しげで可哀想だった。

「下の方」といったのは大橋容疑者の家屋は山林地帯にあるから、そこから降りたエリアのことだ。確かに際立って大橋姓が多い。その一つを訪問すると「あー知らんて、関わらん。とにかくあれには関わらん。この辺りの人にきいてみ。みんな同じやで。この辺も有名になったもんやな」と主は取り付く島もない。

確かに犬を多頭飼いし、しかもゴミ屋敷住民だから関わりたくないという気持ちはよく分かる。また若い頃から変わり者で通っていたという。ある住民の話。

「東大に入った? なんか昔、東大の一次試験に受かったと言っていたけど合格していたのかね。入学はしてないと思うけど。頭がいいのかなあ。南高なんこう(大垣南高校)には通っていたけど。その頃からあんまりええ子ではないと言うてました」

東大に合格した、一次試験に受かった。こういう証言がいくつかある。ただ一次試験というのはよく分からない。大橋容疑者は68歳だからいわゆる共通一次、大学共通第1次学力試験(1979年~89年)の世代ではない。また大垣南高校は名門でドン・キホーテの創業者、安田隆夫氏らを輩出している。だが大垣北高校、大垣東高校ならば、東大合格というのも考えられるが、南高だとさあどうか。学歴については

「ああ(東大合格は)そんなもんうそや、うそや。本(宇宙からのメッセージ)? 一冊持ってきてくれたかと思ったら返せと言うてきたよ。欲しくないからええけど。(大橋容疑者の)倉庫みたいなところに何冊か置いてあったな」

と男性住民は一笑に付す。孤独を深めたのは家庭状況にあったかもしれない。

「家には電線もなかったやろ。水も電気も来てない。本来はあの家はとても立派な日本家屋だったよ。お父さんがしっかりした人で20年以上前に建てたんだけど、建設途中で事故死されて…。そこからおかしくなったかな。お母さんと二人で暮らしていたけど、滅茶苦茶になったからお兄さんの家に逃げるように引っ越していったよ」(同)

本来は立派な日本家屋だ。
釣り鐘があった。どこから持ってきたのだろう。
散乱するゴミ。

生活相談を試みた時期もあったというが「本人も荒れた生活だし、犬がいるでしょ。民生委員さんも怖くて近寄れなくって」(女性住民)という有様。

奇行は広範囲で確認されたという。同女は続ける。

「犬が危ないから子供は外で遊ばないようにしています。ニュースになってびっくりしたけど、普段から変わった行動をしていましたから。自転車に段ボールを三段ぐらいにして何かを運ぶ姿をよく目にしました。ある人が見た時は魚のアラがたくさん入っていたそうです。犬のえさ? そうかもしれませんね。普段は町をウロウロしていてザ・ビッグ養老店(養老町宇田 字郷勺561)でも見かけたことがあります。ここからは車で行くような場所です。図書館にフルフェイスのヘルメットで入館して職員さんともめていたこともありましたね」

この犬は少し懐いた気がした。

町は改善を促していたが…

先述した通りこの周辺は「大橋」姓が多く、大橋容疑者の親族もいる。だから親族に対して対処を求めるよりも気持ちを思って「放置」という形で何十年も、あの状態が続いた。それは地域コミュニティー、田舎社会の温かみでもあるが実際問題、犬の放置は危険だ。傍目で見ればもっと早めに手を打つべきと思うが、「オレには法律が関係ない! と言っていたから。そりゃどうにもならんて」(前出の男性住民)と成す術がなかったのが伝わってくる。

この手の事件やトラブル、特に「動物愛護」が絡むと善意・悪意問わず人間を暴走させる。善意派だったとしても凶暴化し関係機関や地元住民への「抗議」「罵倒」こういった行為に走らせるものだ。

多頭飼いの上、死骸まで見つかったという一報は各地の愛犬家・動物愛護家たちに火をつけたのは大いに予想できる。なにしろ熊の駆除にまで「可哀想」と「お前が死ね」と役所に激怒する人々。さぞかし養老町役場にも殺到したのかと思い、同町住民環境課に聞いてみた。

「ええ確かに何件かの連絡はありました。ただ従来から(大橋容疑者とは関係なく)野良猫を対処してほしいとか保護しろとか、そういった意見の方が多かった気がします」

町に対しては抗議殺到で荒れた訳でもなかった。そしてまだ4頭の犬を目視したこと、また家屋裏からも鳴き声がすることを伝えると、すぐに対応するということだった。「今となってはもう少し早期の段階で対処すべきでした。予防注射のお願いに行っても全く応じてもらえない状況でしてね」(同課職員)

動物愛護法違反だけではなく、狂犬病予防法違反もしばしニュースになる。本来は同予防法で飼い主に毎年1回の狂犬病予防注射が義務付けられているが残念ながら「無視」というケースも少なくない。

「多頭飼い」と「ゴミ屋敷」という二重の問題を抱える今回の事件。ゴミ屋敷の場合は最終的に行政代執行という手段もありえる。またあの犬たちも保健所に保護されるだろう。しかし今後、大橋容疑者にどのような判断が下るか不明だが、荒廃した生活が残るのは言うまでもない。こればかりは公的支援に依存せざるを得ない。

もしアナタの隣に「ゴミ屋敷で犬の多頭飼い、そして奇行の主」がいたらどうするか。今後ますます孤独化、孤立化進むであろうから本件は全く他人事ではない。取材のとっかかりになった「宇宙からのメッセージ」ならぬ「大橋容疑者からのメッセージ」として我々も教訓にするとしよう。

養老の滝にも寄ってみた。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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【岐阜県養老町】多頭飼い&ゴミ屋敷主からの メッセージ」への6件のフィードバック

  1. うましかの一つ覚え

    貧乏人が鳥獣飼育したり自動車所有・運転することには大いに疑問を感じます

    返信
    1. 三品純 投稿作成者

      多頭飼いについてもそうなんですけど、高齢者の運転はまあいいとして
      頼むから任意保険の未加入は勘弁してくださいと切に願います。

      あんなのと事故を起こしたら災難です。

      返信
      1. おくら主任

        この辺り 東海自然遊歩道のコースになっておりまして
        昨年の6月ごろ 何の予備知識もなく家の前を通りがかり(一人です) 
        犬の迫力に驚いた覚えがあります
        2階の窓からも 犬がのぞき 吠え続けていて なかなかの恐怖でした

        機会があればもう一度、と思っていたのですが
        既に逮捕 ワンちゃんも皆保護されたのでしょうか?

        返信
        1. 三品純 投稿作成者

          養老町の担当部署に取材にいったときに何頭目撃したかとか、どの辺りにいたかとか聞かれました。すごい熱心な印象ですぐに保護に行くと言っていました。たぶん残りの犬たちも保護されたと思うけど隠れる場所が多いんですよ。最後の一頭まで保護するのは大変かもしれないですね

          返信
        2. 三品純 投稿作成者

          おくら主任様

          本稿とは無関係ですが東海自然遊歩道を横断されたんですか。
          それとも岐阜県内のエリアを歩いていたんですか。
          僕も遊歩道が好きでいつか全踏破したいと思っているんですよ。
          もし何か関連イベントがあればぜひ教えてください。

          返信
          1. おくら主任

            三品様

            返信ありがとうございました
            犬たちが無事保護されたことを祈ります。
            家の後ろの林の中に 赤いスタジャン?が 吊るしてあったり
            なかなか印象深いスポットでした

            >>東海自然遊歩道を横断
            いえいえ
            風景写真を撮るのが好きで この付近10㎞程度歩いただけです
            でも 森の中を歩くのはいいですよね~