関西生コン「ヤドチョウ」たちの裁判④ なぜ滋賀が狙われた?

カテゴリー: 社会 | タグ: | 投稿日: | 投稿者:
By Jun mishina

湖東協事件の裁判では武建一被告らによる建設業者・生コン業者に対する恐喝などが審理されている。滋賀でも生コン価格を値上げすること、アウト企業を排除すること、といった連帯の方針が事件の根底にあるようだ。ではなぜ滋賀県の企業がターゲットになり武被告ら幹部まで介入してきたのだろう? それは滋賀の生コン業界の事情が影響していた。大阪、奈良、和歌山、京都、兵庫、関西地方では関西生コンの影響力は絶大だが、滋賀となると“制圧 ”できていない―――。そんな勢力図拡大が垣間見えた。

生コン産業政策協議会共同ニュースより。コラムではアウト社に対して厳しい批判を展開。

滋賀県は「内陸工業県」を打ち出し大手企業の工場を誘致してきた。また大津市、草津市は京都、大阪への通勤可能のため1990年代から人口増地域になった。琵琶湖を取り巻くように建設された新興住宅街は壮観だ。工業用途、建設用途のコンクリート需要が増えて2000年代初頭までは滋賀の生コン業者は「協同組合」に加入しなくても潤ったというがその後、生コン価格の下落が起きたという。組合設立は他地域より遅いようだ。共生会という業者の集まりから2007年に「生コン共生事業協同組合」、2012年に現在の名称になった。

業界内では「和歌山の生コン価格は高い」という評価を受けており、モデル地域になっている。県内にアウト企業がないことから「模範地域」との評価だ。仮にアウト企業であってもJIS規格があれば品質にも問題はないだろう。イン企業だから模範という論法も不可解な話だが、ともかく滋賀県のアウト企業の多さは連帯内でも問題視されてきた。

そもそもこの事件の根底には連帯のアウト企業に対する圧力がある。それは機関誌やビラを見てもアウト対策といった文言が随所に確認できる。普通、どの企業がどの下請け、仕入れ先を選択しようが自由なはずだが、アウト企業との取引というだけで執拗な圧力がかかる。

6月7日の公判で証言に立ったセキスイハイム近畿の社員によると2015年に初めて大津市園山の住宅建設の現場に連帯の活動家がやってきたという。同社は「一括工務店」(必要な資材をまとめて納入する業者)から建設資材を仕入れていたが、その中にアウト企業の生コンが含まれていた。証言者によればアウト企業の場合、1㎥あたり約2000円ほど生コン価格が安かったという。品質も特に問題がないというからならば安価な方を選択するのは不思議なことではない。

もともと滋賀県はアウト企業が多く、証人も「一括工務店からコンクリートを購入していたからどの企業がインかアウトか分からない」としながらも「大阪や和歌山は全てイン企業で生コン価格が高く、逆に滋賀は安い」という認識はあったようだ。連帯側としてはアウト企業の生コンを使う業者であり、ターゲットになるのは当然のことだった。

「セキスイハイム近畿は汚水の垂れ流しや違反行為をしている」などと書かれたビラを大津市、守山市、栗東市の同社の顧客宅にポスティングされることもあった。

自社に直接ではなく無関係な取引先や顧客に対する圧力。こうした行為は私も人権団体や活動家に受けたことがある。最もダメージがあるやり方だ。「あいつらの仕事を奪え」「家族や仲間の企業にも圧力」こういうことを平然と人権派という人々が口にするものだ。もちろん連帯がそこまでの行為をしたとは言わない。だが「批判対象の周辺攻撃」は左翼団体、人権団体、“ 十八番”といっても過言ではない。

結局、セキスイハイム近畿はインの生コン業者に変更したところ抗議が来なくなった。実に分かりやすい話ではないか。目下、係争中であるにも関わらずまだイン企業との取引は継続中だ。傍目には異様な関係にも見える。証人によればアウト企業に変更したら再び嫌がらせが起きるかもしれないという理由だ。

滋賀を連帯の勢力圏内に

セキスイハイム近畿社員の証言や周辺取材をまとめると要するに滋賀県内は関西の他県に比べるとイン企業の割合が低く、連帯と距離を置く生コン業者も少なくない。このような特徴があるようだ。だから勢力圏拡大の意味で滋賀の企業にコンプライアンス活動を仕掛けてきたのだろう。
それと同時に滋賀県の協同組合の生コンクリート「くみコン」のCM放送を行った。滋賀県内で組合生コンの広報することで需要拡大を進めている。さらに武被告の起訴事実と陳述も興味深い。

安心、安全、保証付きで販路拡大キャンペーン。
びわ湖放送で放映された協同組合の生コンCM。

同じく6月7日の公判では武被告らが 2015年5月、 タイヨー生コン(野洲市)の横川孝博社長から1000万円を脅し取った事件の起訴状が読み上げられ武被告からも陳述があった。起訴状によると横川氏、また同取締役・井上初雄氏が連帯の方針に従わなかったとして同社の工事現場にコンプライアンス活動が仕掛けられた。それに困った横川氏が第三者を通じて武被告、湯川被告と大阪のホテルで会談。この時に1000万円を武被告に渡し解決を図ったという。

1000万円には領収書もあり「協力金」という名目で支払われていた。また武被告側の認識としては関西生コンの記念事業に対する「寄付金」であり、コンプライアンス活動を止めさせる「手打ち金」ではないという認識だ。武被告、湯川被告も1000万円を脅し取ったことを否定。
しかし検察側からは武被告が横川氏らに対して

「今回こんな経緯になったのはなぜか分かってんのか」
「あんたのところの会社は不備がある」
「だからコンプライス班を動員してるんや」

このように伝えた。

タイヨー生コンに対しては連帯内でターゲットになっており「井上が邪魔や」という発言も紹介された。もちろんこの発言の有無については今後、裁判で解明されるだろうが、一連の背景を見るに、滋賀県には関西生コンの方針に従わない生コン業者がいたこと、タイヨー生コンもその一つであったことが理解できた。そして滋賀県内からのアウト企業の排除、これは一種のスローガンといってもいい。

「適正価格、値戻し」アウト対策が成功しないと非常に難しい問題である。

これは湖東協理事長の奥宗樹が生コン安定供給のために策定した五項目の一つだ。アウト企業をどう県内から締め出すのかが連帯、滋賀協組の課題というのである。連帯の方針に従わない企業を屈服させること、県内からアウト企業の締め出し、そして滋賀県も連帯の影響下に置く。滋賀の事件の裏には「連帯の勢力拡大」「アウト企業対策」という思惑が見えてくる。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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関西生コン「ヤドチョウ」たちの裁判④ なぜ滋賀が狙われた?」への7件のフィードバック

  1. ダロウ

    滋賀以外の地域ではアウト企業が無いというのは同じやり方で屈服させてきた歴史があるという事なのか、それとも滋賀の企業は独立心が強くて簡単には従わせられなかったという事なのか…なんにしても凄まじい話です。

    返信
    1. 三品純 投稿作成者

      ご指摘の通りです。自分もまだ滋賀と他地域の違いが解明できていないのでもう少しお時間を頂いて調べたいと思います。

      返信
  2. せめんといて

    TV朝日・TBS系・新聞はおろか他メディアでも忖度なのかいろいろヤバイのか?全く報じられないのでこのシリーズ興味津々です。さすがガチなメディア^^

    当初警備部が表に出たので?と思ってましたが単なる妨害ではなくて実質公安案件じゃないですかねこれ?
    沖縄のチュチェ思想関連や基地前でアホ踊りしてるオバちゃん達との関連の真偽は如何に。

    返信
    1. 三品純 投稿作成者

      傍聴席に連帯の関係者とも違うガラの悪い人がいるですが、あれはマル暴の刑事ではないかと思ったりしています。もちろん公安も絡んでると思いますよ。

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  3. セメント痛てぇ~

    そもそも論ですが、生コン業者から買わんと現場で練ったらダメなんですか?
    炉壁の耐火物なんかは現場で練練してますが。

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    1. 三品純 投稿作成者

      自分も専門家ではないから技術的なことは言えませんが、現場で練るのは無理じゃないですかね。特に大きな工事になると大量のセメントがいるでしょうから。

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  4. 生くらコンクリート

    このタイヨー生コンてところは、協力金を払ったらすぐにコンプライアンス活動は終わったんだよね〜不思議だね〜普通に考えたら手打ち金だよね〜
    滋賀県内のもう一つのプラントも同じだね〜

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