解決は数十年以上先? 京都砂防ダム部落(後編)

カテゴリー: ウェブ記事 | タグ: , | 投稿日: | 投稿者:
By 宮部 龍彦

前編

前回訪れてから3年後の今年、筆者は再び砂防ダム部落を訪れた。昨年の5月に「砂防ダム内の空き家撤去 京都、不法占拠を半世紀黙認」という記事が京都新聞に掲載されたので、状況を見に行くためだ。

驚いたのは、部落の様子があまり変わっていなかったことだ。確かに部落の真ん中辺りの家がいくつか撤去されていたが、他は相変わらずである。

いくつか家が撤去されている。

いくつか家が撤去されている。

少し変わったのが、なぜか前回はあまり見かけなかった、表札が家に掲げられるようになっていたことだ。

家々に表札が掲げられている。

家々に表札が掲げられている。

そして、驚いたのが、明らかに最近建てなおされたかリフォームされたと思われる家を見かけたことだ。どう見てもすぐに立ち退くようには思えない。

比較的新しい家。

比較的新しい家。

住民に、移転のことを聞いてみたところ、開口一番に返ってきたのが「移転なんてせぇへんで」という言葉だった。

「強制的にはどかされへんと京都府は言うてる。(移転は)10年20年先の話や。立ち退く限りは府に補償してもらわなな」

件の玉川さんも、体調を崩したままで、移転の話は全く進んでいないのだという。

「そんなん分からへんから、京都府に聞いてや」

移転問題については、あとは何を聞いても、このようなつたない答えが返ってくるのみだ。

「自分でアパート探して、出て行った人もいてはるけどな」

住民はそうも言った。撤去された家は、住人が自主的に出て行った家なのだという。水害は怖くないのか問うと、

「全部の家が水に浸かったわけちゃうで。撤去された家があったのは一番あぶないとこ。まあ、ここにも水は上がってくるけど、何十年に1回の話。」

こんな具合で、はたから見たインパクトととは裏腹に、当の住民にはそれほどの危機感はないようだ。

また、別の事情通によると、住民の間でも考えは分かれているという。

「玉川さんは住民代表というより、代表になりたかった人だね。玉川さんのグループもあれば、それ以外のグループもある。まとまった自治組織のようなものがないんでね。」

住民の事情も様々で、あそこしか住む人がない人もいれば、ちゃっかり別の住居を持っている人もいるのだという。そのため、住民の思惑も様々で、それが問題を複雑にしている。

筆者は、砂防ダムを管理している、京都府砂防課に話を聞きに行った。

「撤去した住宅は、住民が自主的に出て行った空き家ばかりです。今のところ、強制的に住民を退去させることはしていません」

やはり、住民の言うとおり強制的に家を撤去したわけではなかった。

筆者の疑問は、50年以上も行政が放置していたということになれば、行政が補償する必要が出てきてしまうのではないかという点だ。民法には「二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する」という規定がある。

「砂防ダムは公共物ですから、府としては時効取得されたものとは考えていません。」

この点、詳しく説明すると、判例によれば公共物の時効取得については裁判所の判断は厳格で、その公共物が完全に機能を喪失していた場合にしか時効取得は認められない。しかし、天神川の砂防ダムは今も残っていて、一応砂防ダムとしての機能は持ったままだ。それゆえ、時効取得は認められず、現在も不法占拠状態にあると言わざるを得ないわけだ。

「少なくとも、衣笠開キ町の件については、府として補償したことも、見舞金という形で何らかの金銭を支払ったことも、一度もありません」

そう、担当者は強調した。

では、最終的に住民に対して訴訟をするか、行政代執行により強制的に退去させるのか、まだ何も決まっていないという。ただ、一般的にこのようなケースでは行政代執行による強制退去を行った事例はほとんどないということだ。

結局、週に1回程度のペースで担当者が現地に行き、地味かつ地道に、粘り強く住民の説得と交渉を続けているのが現状なのだという。

ということは、この問題について劇的な進展を期待することはできないということだ。

やはり、京都砂防ダム部落の光景は、少なくともあと数十年は残り続けることになるのだろう。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

wp-puzzle.com logo

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

解決は数十年以上先? 京都砂防ダム部落(後編)」への9件のフィードバック

  1. .

    これがもしコリアン部落ではなく被差別部落だったら、尾崎清光のような手合いが「ここに人権会館をつくるんだ。だからここに家を建てられるようにしろ。やらなければ差別だ!」と官庁に怒鳴り込んで用地を市街化区域に変更させた上でボロ儲けしていたんでしょうか。やはり同和と在日では同和の圧勝?

    返信
    1. 鳥取ループ 投稿作成者

      尾崎清光でも砂防ダムの中を市街化区域にさせるのは無理でしょう。
      尾崎清光なら自分が居座って立ち退き料を取るんじゃないでしょうか?

      返信
      1. 斉藤ママ

        尾崎清光ならば、市街化に出来るかもしれませんよ。
        えせ同和と政治家、中央官庁の癒着は、公然の秘密。

        「1982年6月2日、ホテルオークラで誕生祝賀会を行なった際には、中川一郎、稲村佐近四郎、武藤嘉文ら自民党代議士はもとより政財界人等1000人以上が訪れた。そのうち150名までが中央官庁の事務次官・長官・局長クラスの上級官僚であった。」

        返信
  2. 飯田橋

    別件ですが失礼します。
    最近こちらを拝見するようになったものです。
    静岡県在住なので、示現舎さんの本が図書館にないかどうか「おうだんくんサーチ」
    http://www.tosyokan.pref.shizuoka.jp/contents/c-search/
    で検索しようと思いました。
    検索項目を「出版社/ジャーナル」として「示現舎」と入れて検索したところエラー表示(不明なエラーです)が出ました。日を変えて何度やっても結果は同じです。
    本がなければ「検索結果がありません」と表示されます。
    こういった件については何か把握されておられるでしょうか?

    返信
    1. 鳥取ループ 投稿作成者

      私が検索したところでは、特にエラーにはなりませんでした。該当する書籍は見つかりませんでしたが。
      国会図書館サーチを使えば見つかりますよ。

      返信
      1. 飯田橋

        お手数をおかけしてすみません。
        再度試したところやはりエラー表示のままですが、特定の出版社を排除しているわけではないのですね。
        ありがとうございました。

        返信
  3. ピンバック: 解決は数十年以上先?京都砂防ダム部落(前編) | 示現舎

  4. 博多っ娘

    福岡市の中洲にも不法占拠の住宅が昔ありまして、高層住宅(市営・県営)建ててそちらへ移動させたと聞いています。今は、誰でも空いていれば申し込めますが、一等地でありながら昔は博多で一番治安の悪い場所と言われていました。

    返信