「ネットの電話帳事件」口頭弁論が行われないまま終了か?

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By 宮部 龍彦

筆者が開設した無料電話帳検索サイト「ネットの電話帳」がプライバシーを侵害しているとして、昨年8月14日に筆者が京都地裁で提訴された。この種のサイトがプライバシー侵害に当たるかどうかを争う珍しい裁判ということでメディアからも注目を集めていたのだが、形式的には口頭弁論が1回も行われていない状態だ。

初回口頭弁論は去る6月27日に京都地裁で開かれた。通常は、原告が訴状を陳述し、それに続いて被告が答弁書を陳述するというのが裁判の手続きなのだが、原告代理人の島崎哲朗弁護士は、訴状の陳述前に意見があると申し出た。

島崎弁護士は、今回の事件は非常に特殊であると述べた。特に原告が書面を出すたびに、被告が原告の本名住所が掲載されたままでインターネットで公開していること、ネットで公開した書面から原告の本名住所を消すように仮処分をかければ、被告は保全異議を申し立てるなど徹底抗戦。原告はもう裁判を続ける気をなくしているということだった。

確かに筆者は訴状が来れば横浜地裁相模原支部への移送を申し立て、認められなければ即時抗告、それも認められなければ特別抗告、それだけでなく、仮処分に関連するあらゆる手続きについてもことごとく最高裁まで抗告するという全力での抗戦を貫いてきた。

それというのも、元々この訴訟で手を抜くつもりはなかったところ、筆者のもとに島崎弁護士側を京都の解放同盟が支援しているといったメールが届き、真偽はともかくその可能性があれば、なおさら手抜きは許されないと考えたのである。しかし、当の西島藤彦部落解放同盟京都府連委員長に聞いてみると「なんや住所でポンって?」という返事。どうも本当に関係なかったようである。

島崎弁護士は「もう書面をネットに載せないと約束しますか?」と筆者に問うたが、筆者は拒否。当日は京都地裁の廊下に原告の本名が張り出されてあったので、筆者はそのことなどを挙げて、別に原告や弁護士に恨みはないが、約束に応じることは裁判公開の原則や表現の自由に反するし、弁論の非公開や裁判記録の閲覧制限等のしかるべき手続きが取られていないと反論。議論は平行線で、裁判官もそういった問題までは立ち入ることは出来ない旨を述べた。

島崎弁護士は「こんなことではプライバシーに関する訴訟はできなくなる」と述べ、今回のやり取りを調書に書くように裁判所に要求し、「裁判は取り下げということになるかも知れないが、弁護士活動の妨害で私自身が提訴することを検討する」と激怒。結局両者とも書面を読み上げることなく、「休廷」という扱いとなった。

一応、弁論の再開期日は8月19日13時10分であることが指定されたが、実際に弁論が再開されるかどうかは不透明な情勢だ。ただ、6月27日に島崎弁護士が関連する仮処分を取り下げた旨の書面が送られてきたので、訴訟自体も取り下げられてしまう可能性が高い。

しかし、単なる住所氏名の公開の是非を裁判で争うことが、果たしてコストに見合うことなのか。筆者自身が言うのも何だが、結局強気に出てゴネた方が得するのが世の中というものなのか。いろいろと考えさせられることになった。

単なる電話帳をそのままネットに掲載する行為が果たして「プライバシー侵害」なのか、どのように裁判所が判断するのか興味深いところではあったが、それがうやむやになるのは残念なことである。ただし、「弁護士活動の妨害」ということで事実上は一連の訴訟として続行される可能性があり、まだ目は離せない。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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「ネットの電話帳事件」口頭弁論が行われないまま終了か?」への2件のフィードバック

  1. 匿名

    お世話さんです。鳥取県の話なんですが、毎年毎年何処から銭が出てるのかわかりませんが、鳥取県庁 総務部人権・同和対策課から啓蒙活動の様なパンフレットを送りつけてきて(法人宛)アンケート返答を求めてます。
    しかたないので、適当に答えてますが、鳥取県も好きですよね、同和w

    返信